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活性型ビタミンDで小胞体ストレスを緩和しよう!
論文紹介著者

水落 裕(博士課程 1年)
GCOE RA
整形外科学教室
第一著者名・掲載雑誌・号・掲載年月
Amy E. Riek/THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 287, NO. 46, pp. 38482-38494, November 9, 2012
文献の英文表記:著者名・論文の表題・雑誌名・巻・号・ページ・発行年(西暦)
Vitamin D Suppression of Endoplasmic Reticulum Stress Promotes an Antiatherogenic Monocyte/Macrophage Phenotype in Type 2 Diabetic Patients
Amy E. Riek, Jisu Oh, Jennifer E. Sprague, Alexandra Timpson, Lisa de las Fuentes, Leon Bernal-Mizrachi ,Kenneth B. Schechtman, and Carlos Bernal-Mizrachi
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 287, NO. 46, pp. 38482-38494, November 9, 2012
論文解説
はじめに
体内でタンパク質が合成される際に、その品質管理を行っているのが小胞体という器官で、ここでは不良もしくは過剰に分泌されたタンパク質が蓄積します。この不良タンパク質の蓄積のことを小胞体ストレスと呼びます。この小胞体ストレスを除去もしくは分解するシステムが小胞体ストレス応答です。
小胞体ストレスは糖尿病や神経変性疾患等の病気の発生に関与していることが明らかにされており、これらの病気の中でも2型糖尿病では合併症として心血管病変を起こし、この症状は命にかかわる大変重要な問題です。
これまでに一般的に活性型ビタミンD(※1)欠乏がある2型糖尿病患者では心血管病変のリスクが2倍になることが知られているものの、その詳しいメカニズムについては分かっていません。
紹介する論文では、活性型ビタミンDが小胞体ストレスを抑制することで2型糖尿病患者での心血管病変の発生を減少させる可能性があることを明らかにしています。
方法/結果
マクロファージは白血球の1つで単球から分化し、主に細菌、ウイルス、死んだ細胞等の異物を取り込む役割を担っています。
またその他の役割として、血管壁にたまった変性コレステロールの処理を行っており、この変性コレステロールが処理しきれない場合には血管壁に変性コレステロールが沈着し、これがアテローム変性(※2)の原因になります。
マクロファージは活性化の違いによりM1型とM2型の2種類に分類されますが(※3)、以前このグループは小胞体ストレスによりマクロファージがM2型への分化にシフトすることによりアテローム変性が生じることを明らかにしています。
今回の実験では2型糖尿病患者でのマクロファージについて、小胞体ストレス応答分子、血管内皮細胞新生に関与する分子、マクロファージの分化と、血中活性型ビタミンD濃度との関係について調べています。
解析の結果、2型糖尿病患者のうち血中活性型ビタミンD濃度が高い患者のマクロファージでは小胞体ストレス応答分子発現が低下し、血管内皮細胞の新生に関与する分子の発現低下も認めました。
一方、血中活性型ビタミンD濃度が低い患者のマクロファージでは小胞体ストレス応答分子発現の上昇とM2型への分化を認めました。さらにマクロファージに活性型ビタミンDを加えると、M1型への分化にシフトしていくことが明らかにされました。
まとめ
血中活性型ビタミンD濃度が高い2型糖尿病患者のマクロファージでは小胞体ストレス応答分子発現が低下し、更に血管内皮細胞の新生に関与する分子発現も低下する一方、血中活性型ビタミンD濃度が低い患者のマクロファージでは小胞体ストレス応答分子発現の上昇を認めました。
また血中活性型ビタミンD濃度が低い患者のマクロファージではM2型へと分化し、これに活性型ビタミンDを加えると、M1型への分化にシフトしていくことが分かりました。
以上より、2型糖尿病患者において、活性型ビタミンDが小胞体ストレス応答を抑制することで、マクロファージ分化の誘導を制御したり、血管内皮細胞の新生に関与するサイトカイン発現を抑制することで、血管のアテローム形成→動脈硬化の流れを抑制し、心血管病変を抑制している可能性が示されています。
私達の研究室でも骨芽細胞や骨芽細胞様細胞を用いて、小胞体ストレス応答と活性型ビタミンDの関係性を調べており、大変興味深い内容の論文でした。
用語解説
- ※1 活性型ビタミンD:
ビタミンDは体内に入ると肝臓および腎臓で水酸化され、活性型ビタミンDとなる。 - ※2 アテローム変性:
動脈の内膜やその下の脂質が巣状になって滞留すること。 - ※3 マクロファージ:
マクロファージは機能的にM1型とM2型との2種類存在しており、M1型はバクテリア、ウイルスや真菌類の感染時に活性化する。一方のM2型は寄生虫感染、アレルギー応答、脂肪代謝、創傷治癒、癌転移等に関与している。

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