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片頭痛患者では血管内皮前駆細胞が少ない?
論文紹介著者

滝沢 翼(博士課程 1年)
GCOE RA
内科学(神経)
第一著者名・掲載雑誌・号・掲載年月
Xiana Rodriguez-Osorio/Neurology 79, 474-479, July 18, 2012
文献の英文表記:著者名・論文の表題・雑誌名・巻・号・ページ・発行年(西暦)
Xiana Rodriguez-Osorio, Tomas Sobrino, David Brea, Francisco Martinez, Jose Castillo, Rogelio Leira.
Endothelial progenitor cells : A new key for endothelial dysfunction in migraine
Neurology 79, 474-479, July 18, 2012
論文解説
背景
片頭痛は片側性の拍動性頭痛を呈する疾患で、未治療では4~72時間の頭痛発作が持続します。悪心、嘔吐、光や音に対する過敏を伴います。日常的動作で頭痛が悪化するため、生活支障度が非常に高い疾患です。本邦での有病率は疑診例も含めると8.4%と言われております。
近年、片頭痛は頭痛発作のみではなく、虚血性脳卒中との関連についても注目されてきています。
血管内皮前駆細胞(EPC: Endothelial progenitor cells)は1997年にAsaharaらが報告した血液中に存在する骨髄由来の前駆細胞です。血管に障害が生じたとき、内皮の補充や修復に作用すると考えられており、EPCの量や質の低下は虚血性心血管疾患の発症に関与するとも報告されています。
今回のブログでは片頭痛患者における血管内皮前駆細胞(EPC)の数を含めた血管内皮機能の異常を示した論文を紹介させていただきます。
論文解説
Rodriguez-Osorioらはスペインにおいて47名の片頭痛患者、23名の健常対象について血管内皮前駆細胞(EPC) 、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP: calcitonin gene-related peptide)(※1)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)(※2)、窒素酸化物(NOx: nitric oxide stable metabolites)(※3)を測定しました。EPCについては末梢血単核球細胞培養法によるEPCコロニーの形成数(CFU-EC)で評価しました。
尚、心疾患、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の既往のある者、感染症、慢性炎症性疾患、重症な全身性疾患に罹患している者、月経異常、妊娠や授乳中の女性、肥満、喫煙、血管拡張作用のある薬物内服中の者は研究から除外されています。
片頭痛群と対照群のそれぞれの間欠期の測定結果を比較すると、片頭痛群ではCFU-ECは低下、CGRP、VEGF、NOxは増加していることが分かりました。
片頭痛患者47名(前兆のある片頭痛14名、前兆のない片頭痛33名)のうち19名(前兆のある片頭痛8名、前兆のない片頭痛11名)については間欠期のみではなく発作期の値についても測定することができました。
間欠期と発作期を比較すると、発作期においてCFU-ECはより低値、CGRPとNOxはより高値を示しました。VEGFについては間欠期と発作期にて有意な差は認めませんでした。
ここまでの結果をまとめると以下の表のようになると考えられます。
また、片頭痛患者のCFU-ECを罹患期間で比較すると、罹患期間が長いほどCFU-ECが低値を示すことが分かりました。CGRP、VEGF、NOxの値については罹患期間との相関関係はみられませんでした。
Rodriguez-Osorioらは次のように考察しています。
CGRPは神経原性炎症の発生に関与し、かつNO産生を促進する作用がある、侵害刺激作用のあるペプチドです。NOは頭蓋内血管拡張に関与する神経伝達物質です。今回の研究結果からCGRPやNOの上昇が血管内皮機能の障害を介してEPCの低下を導いた可能性が考えられました。特に発作期にその作用が顕著であることも示されました。
VEGFは血管新生に関与する分子であり、EPCを放出します。片頭痛群ではEPCは低下、VEGFは増加していることから、VEGFが代償的に増加して働いている可能性も考えられました。ただし、片頭痛におけるVEGFの役割は不明な点も多く今後更なる研究が期待されます。
今回の論文の要旨は以下のようになります。
- 片頭痛患者では血管内皮前駆細胞(EPC)の数が低下していた。片頭痛の罹病期間が長いほど低下は著明であった。
- 片頭痛患者では血管内皮機能障害が存在していることを示唆する所見と考えられた。
用語解説
- ※1 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP: calcitonin gene-related peptide):
37個のアミノ酸より構成される神経ペプチド。血管拡張作用を有する。 - ※2 血管内皮細胞増殖因子(VEGF: vascular endothelial growth factor):
脈管形成や血管新生に関与する分子。 - ※3 窒素酸化物(NOx: nitric oxide stable metabolites):
強力な血管拡張作用を有するNO及び、NOが酸化されて生じた代謝物であるNO2-やNO3-を含む。

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