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小動物用PET(Positron Emission Tomography)で、ラットの脳梗塞巣を探知することができる [18F]BMS-PET
論文紹介著者

井上 賢(博士課程 4年)
GCOE RA
脳神経外科/生理学教室
第一著者名・掲載雑誌・号・掲載年月
DAI FUKUMOTO/SYNAPSE 66:909-917 (2012)
文献の英文表記:著者名・論文の表題・雑誌名・巻・号・ページ・発行年(西暦)
DAI FUKUMOTO, SHINGO NISHIYAMA, NORIHIRO HARADA, SHIGEYUKI YAMAMOTO, AND HIDEO TSUKADA
Detection of Ischemic Neuronal Damage With [18F]BMS-747158-02, a Mitochondrial Complex-1 Positron Emission Tomography Ligand: Small Animal PET Study in Rat Brain
SYNAPSE 66:909-917 (2012)
論文解説
PETは非侵襲性の画像検査で、15Oによる酸素代謝、[18F]FDG※1による糖代謝が、脳の機能の有無を評価する一般的なパラメータである。これまでの研究で、PETでは虚血後1週間後より脳梗塞巣の周囲において、活性型ミクログリアと炎症を反映してしまうため、特に亜急性期において神経損傷の評価にはFDG-PETの使用が難しいとされている。
[18F]BMS747158-02(BMS社の製品番号)はミトコンドリアのComplex-1※2に対するピリダジノン・アナログであり、心筋血流の画像評価に開発されてきた。Complex-1の活性に依存するリガンドのため、心臓だけでなく、ミトコンドリアを高密度に有する脳において取り込みが高値と考えられた。
<心臓と脳で取り込み高値>
本研究ではラットの脳梗塞を虚血前、1日後、7日後にBMSと[11C]PK11195(末梢性ベンゾジアゼピン受容体に対するリガンドで、活性型ミクログリアを検出)にてPET評価を行い、triphenyltetrazolium chloride(TTC)※3染色によってミトコンドリアの活性の有無を評価した。
<BMSでは、Day1,7とも低値>
<PKでは、Da1低値、Day7高値>
結果は、虚血1日後では、脳梗塞巣でBMS,PKともに取り込みが低下し、TTC染色でもミトコンドリアの活性低下が確認された。虚血7日後では、脳梗塞巣でBMSは取り込みが低下しているが、PKでは活性型ミクログリアの増生が確認できた。TTC染色ではミトコンドリアの活性が確認され、BMSと結果が乖離した。神経細胞の脱落をNeuN、ミクログリアをIba1の免染にて確認され、BMSが神経細胞の障害を特異的に評価できたことが分かった。
<Day7ではミクログリアの増生のため、TCCではミトコンドリアが検出され、PKでは高値になる>
以上の結果よりBMS-PETが、急性期および亜急性期の脳梗塞における神経細胞の障害を評価できるリガンドであることが示された。
コメント
BMS747158-02はミトコンドリアのリガンドであるが、機序こそ不明なものの、心臓と脳に特異的であり、今回の論文で脳では神経細胞に特異的であることが分かった。MRIでもFDG-PETでも検出できなかった脳梗塞のコア(壊死に至る中心部位)のみ分かるという夢のようなリガンドである。これにより、このコアの周囲を細胞治療の標的とすることが可能となり、新しい治療法の開発の礎と成り得るであろう。
用語解説
- ※1 FDG:
フルオロデオキシグルコース(18F-fluorodeoxy glucose)のことで、糖代謝を見る核種であるが、糖代謝の高い癌の検出に用いられる。正常脳は糖代謝が高いため腫瘍の検出には不向きで、炎症でも糖代謝は上がるため脳梗塞や変性疾患でも使い難い。 - ※2 ミトコンドリア内膜のComplexI:
ミトコンドリアの内膜にはI~Vのタンパク質の複合体が存在し、I~IVは電子伝達系を、Vは酸化的リン酸化を担う。ComplexIの働きは、NADH2++2H+→NAD++4H++2e-。 - ※3 TCC:
2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド (2,3,5-Triphenyl tetrazolium chloride)のことで、ミトコンドリアの検出に用いる。ミトコンドリアの電子伝達系の脱水素酵素によって白から赤に染まる。ミトコンドリアの生理活性が分かる。

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