慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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第35回日本分子生物学会年会

氏名

周 智
GCOE RA
生理学

詳細

参加日:2012年12月11日~2012年12月14日

活動レポート

GCOE Young Researcher Support Planの補助を頂き、2012年12月10日から14日の5日間にわたり福岡県博多市にて開催された、第35回分子生物学会年会に参加させて頂きました。会場が福岡国際会議場・マリンメッセ福岡という海の近くというせいもあってか、風が強く、会場間の徒歩による移動中はとても肌寒く感じました。

今回、私はdirect reprogrammingによるコモンマーモセット線維芽細胞の神経細胞への直接誘導に関するポスター発表をさせて頂きました。私は、遺伝子改変霊長類を用いたアルツハイマー病モデルの作出と解析というテーマで研究を進めておりますが、作出される個体が表現型を呈するまでには相応の時間を要すると考えられます。そこで、in vitroにおける解析ツールとして、本誘導法により得られる神経細胞が有用だと考えたわけです。

我々は、まずマーモセット胎児皮膚由来線維芽細胞に、これまでに報告されている転写因子群をレンチウイルスベクターにより導入致しました。その結果、遺伝子導入を行った線維芽細胞を神経培地中で培養することにより、誘導開始後2-3週間で、形態および遺伝子発現において神経細胞様パターンを示す細胞へと誘導することに成功致しました。また、得られた神経様細胞は電気刺激により、電位依存性ナトリウムチャネル依存的な細胞内カルシウムイオン濃度上昇を示したことから、これらの細胞は神経細胞として機能的であることが示唆されました。今後は、誘導効率の改善、純化を行い、生化学的および神経生理学的な解析が可能な実験系を確立し、遺伝子改変マーモセットのin vitro解析に応用していきたいと考えております。

このような、特定の種類の細胞に特有な転写因子の組み合わせを皮膚などの細胞に発現させることで、iPS細胞といった未分化な状態を介さずに分化転換する手法は直接誘導と呼ばれます。今回の学会においても、直接誘導を取り上げたワークショップが組まれ、慶應義塾大学の家田先生や九州大学の鈴木先生らが、それぞれ心筋細胞および肝細胞への直接誘導法に関して発表されたことからも、直接誘導がホットな研究分野であることがうかがえます。また、私のポスター発表にも、基礎研究に従事する大学の先生や製薬企業の研究員が興味を持ってくださり、基礎と応用の両方の観点から注目されている分野であると感じました。

自分の発表以外では、神経変性疾患や神経発生、ES・iPS細胞に関する発表を中心に聞きにいき、また積極的に質問することで、発表者と有意義なディスカッションができたのではと思います。

番外編として、福岡は食べ物がおいしいということで、夜な夜な炊き餃子や、長浜ラーメン、もつ鍋など美味しいものを求めて街へ繰り出したのもいい思い出になりました。

最後になりますが、このような研究の進捗報告と自己研鑽の機会を与えて頂きましたGCOEプログラムに感謝したいと思います。

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