慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
English

Young Researchers' Trip report


ホーム > Young Researchers' Trip report > 54th ASH (American Society of Hematology) annual meeting

54th ASH (American Society of Hematology) annual meeting

氏名

國本 博義
GCOE RA
血液内科

詳細

参加日:2012年12月7日~2012年12月15日

活動レポート

私は2012年12月7日から12月15日まで、54th ASH (American Society of Hematology) annual meetingへの参加および研究室訪問のため出張した。今年の学会はGeorgia州AtlantaのGeorgia World Congress Centerでの開催であった。初日は"Myeloid Meeting"に参加し、造血器腫瘍の病態解析研究に関する新しい知見に触れることができた。2-4日目は、造血器腫瘍関連のeducational session、scientific session、そしてposter sessionに参加し、最新の基礎研究の成果、臨床研究の報告などを拝聴した。学会のハイライトであるplenary sessionや基調講演では、腫瘍細胞の全エクソンシーケンスに基づく新規遺伝子異常の報告や、病勢の進行に伴って出現する多様な腫瘍性クローンを全ゲノムシーケンスを行い分子レベルで解明した報告などが発表され、造血器腫瘍の病態解明のためのツールとして次世代シーケンス技術が大きな威力を発揮していることを実感した。

今年は学会終了後、米国内の2つの研究室を訪問した。学会後に訪問したのは、Ohio州ClevelandにあるCleveland Clinic, Translational Hematology and Oncology ResearchのDr. Jaroslaw P. Maciejewskiの研究室である。Clevelandは五大湖のひとつであるエリー湖に面した街で、Cleveland Clinicは街の医療産業を担う一大拠点である。Cleveland ClinicにはTaussig Cancer Instituteと呼ばれるがんセンターがあり、Translational Hematology and Oncology Research はその一部門である。Dr. Maciejewskiはこれまで一貫して骨髄異形成症候群や骨髄増殖性腫瘍、骨髄不全症候群の患者骨髄検体を用いた全エクソンシーケンスおよびその解析を通して、様々な新規遺伝子異常を明らかにするとともにその臨床的意義を報告してきた。今年のASH annual meetingのplenary sessionでは、本研究室のDr. Hideki Makishimaが全エクソンシーケンスにより骨髄系腫瘍における白血病進展に関わるSETBP1遺伝子変異を明らかにした研究成果を報告している。研究室には日本人のほか、中国人、ポーランド人、オーストリア人、インド人の研究者が在籍し、アメリカらしい多国籍メンバーであった。Dr. Makishimaは研究室のほか、Cleveland Clinicの病院棟や研究部門を紹介してくださった。またラボメンバーを集めて小セミナーを開催してくださり、私自身のこれまでの研究内容を紹介する機会をいただいた。Clevelandでの滞在は1日弱に過ぎなかったが、Dr. Maciejewskiラボの現在そして今後の研究テーマのみならず、Cleveland Clinicの研究環境や研究生活に至るまで知ることができ大変有意義な訪問であった。

Clevelandの次に訪れたのはNew York州New YorkにあるMemorial Sloan-Kettering Cancer Center, Human Oncology and Pathogenesis ProgramのDr. Ross L. Levineの研究室である。Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterはNew YorkのManhattanで120年以上の歴史を有するアメリカ屈指のがんセンターである。Dr. Levineは骨髄増殖性腫瘍におけるJAK2遺伝子変異を世界に先駆けて報告されJAK2関連の研究を継続されるとともに、近年は造血器腫瘍で高頻度に遺伝子変異が報告されているエピジェネティクス関連遺伝子に関する研究もされている。研究室に到着してすぐにDr. Levineより研究室を案内していただいた。その後ラボメンバーを集めてStudent Lectureを開催してくださり、私はこれまでの研究内容を"Roles of Tet2 in hematopoietic system and challenges for understanding pathophysiology of human myeloid malignancies"という演題で英語口演した。TET2変異は造血器腫瘍で共通してみられるエピジェネティクス関連遺伝子変異であり、Dr. Levineのグループの研究テーマでもあるためラボメンバーより多くの質問をいただき有意義なdiscussionをすることができた。学会発表ではなかったが、以前参加させていただいたGCOE主催のEnglish presentation skill workshopでのノウハウが、このような場面で大変役に立った。Lectureのあとはresearch fellow, research associate, research assistantなどのメンバーと話をする機会をいただき、それぞれの研究内容や研究生活などについて幅広く話を伺うことができた。

最後に、本学会参加と研究室視察のために尽力してくださった血液研究室の中島秀明先生、そして視察先でお世話になりましたDr. Maciejewski、Dr. Levineとそのラボメンバーの皆様にお礼申し上げます。

Copyright © Keio University. All rights reserved.