慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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浜松ホトニクス 中央研究所 PETセンター

氏名

井上 賢
GCOE RA
脳神経外科/生理学

詳細

参加日:2012年7月24日~2012年8月8日(うち5日間)

活動レポート

昨年に引き続き、国内の共同研究でサポートして頂きました。研究施設は、同じく浜松ホトニクス株式会社のPETセンターです。

2012年7月ヒッグス粒子が話題になりましたが、この検出器を担当していたのが、この浜松ホトニクスです。浜松ホトニクスは半導体レーザー、フォトダイオード、光電子増倍管、分析用光源など光関連で高い技術力を持つ会社で、光電子増倍管では世界シェア約90%を占めています。

私が実験をさせて頂いているのは、その中のPETセンターで、動物研究用PET装置や小動物用PET装置2基および小動物用CTがあり、サイクロトロンも所有しており、共同研究の場として研究施設提供され、多くの共同研究や、創薬研究などが行われております。

私の現在、マーモセットの脳梗塞モデルの作成とその評価方法の確立をテーマに研究をしています。

霊長類を扱った実験ですが、他の旧世界ザルと違い、MRIやPETがヒトと同じ大きな設備を必要とせず、げっ歯類と同じ小動物用で実験が可能です。そうは言っても、慶應大学内では、設備準備中であり、まだその実験ができません。

PET研究における最大の障壁は、ポジトロン核種の半減期です。ポジトロンを放出する主な元素は、酸素、窒素、炭素、フッ素などですが、それぞれ半減期が2分、10分、20分、120分と非常に短く、フッ素を除き、サイクロトロン設備を併設していないと、薬剤を搬送・投与するまでに、減衰してしまいます。フッ素に関しては、比較的半減期が長いため、FDGという化合物のみが販売され、糖代謝が亢進している腫瘍などの検出の目的に臨床では使用されています。脳研究の分野では、脳では糖代謝がもとから高いため腫瘍の検出が難しいことがあったり、小動物研究では動物を眠っている状態で撮影するので脳の代謝が下がってしまい、脳虚血や変性疾患の検出が難しくなったりします。そのため、脳研究にはサイクロトロンを所有する施設で、糖以外の化合物で実験することが重要となるのです。

今回は、昨年の実験と違い、脳梗塞作成の手術は川崎市の実験動物中央研究所にて行いました。そして動物を浜松まで搬送します。そこで、手術から2週間後と4週間後のPET撮影を行いました。

2施設を利用したおかげで、今回は同一の個体でMRIとPETの両方の撮影が可能となりました。PETの能力をMRIと比べることができるようになったのです。現在、データ解析中ですが、途中経過だけでも非常に興味深い結果が出ています。論文にすべく現在奮闘しております。

最後になりましたが、恵まれた実験施設への出張をサポートしていただいたGCOE Young Researcher Support Plan制度に深く感謝申し上げます。

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