慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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10th International Society for Stem Cell Research 2012

氏名

橋本 寿之
助教
(2009-2010年度 GCOE RA)
循環器内科

詳細

参加日:2012年6月13日~2012年6月15日

活動レポート

私は今回2012ISSCRにてポスター発表をする機会を得た。ISSCRは、幹細胞研究についての情報交換を促す目的でHarvard大学のLen Zon教授らにより2002年に開設された国際学会で、今回は10回目の節目の開催であった。横浜での開催となったが、日本はもちろんアジアで初の開催ということで、レベルの高い学会に国内で参加できる機会はあまりないと思い、演題登録をしてみた。結果は幸運にも採択で、6月13日から15日の3日間、世界中から集まった科学者たちの熱意に溢れた発表を聴いてきた。

メインホールでは神経、皮膚、血液、心臓などあらゆる分野の幹細胞のトップリサーチャーが最新の幹細胞研究内容を発表しており、あれだけの大きいホールが満席になり、立ち見の人が続出している様子を見るのは初めての体験で圧倒された。幹細胞の発見及び作成の報告が注目されたここ数年とは打って変わり、現在はその幹細胞の質、培養条件、分化の効率、臨床応用と、ツールとしていかに有用に用いるかが国際的なホットトピックとなっており、興味深い報告が相次いだ。

私は、心臓を臓器として体外で培養し、蛍光蛋白を用いることにより心筋細胞の細胞周期をリアルタイムに観察して、その時空間的なパターンを解析した研究内容を発表した。心筋細胞は出生後に終末分化し、細胞周期は停止して、細胞増殖が止まってしまい、その後の心臓の成長は心筋細胞の肥大によるものであるというのが世の中の通説である。しかし、その細胞周期がいつどのようにして止まるかということは解析が十分になされていない。また、近年存在が相次いで報告されている心筋の幹細胞が心筋に分化する過程や分化した後に細胞周期がどのように制御されているかも明らかになっていない点が多い。私の研究はそのような点に着目し、心臓をex vivoで培養してライブイメージングを行うことにより、生体に近い状態で心筋細胞の細胞周期をリアルタイムに観察して解析した。

ポスター会場は分野別に発表場所が分かれており、私は心臓領域の会場での発表であった。心臓領域においては幹細胞の研究が中心であったが、古典的な発生の研究から、心筋分化、心筋精製、microRNAを用いた比較的新しい分野の研究内容が約30演題ほど掲示されていた。分野別に並んでいたこともあり、近くの発表者同士で意見を交わすこともあれば、興味を持ってくださった参加者からご質問を頂くこともあり、発表中は活発な討論を行うことができた。質問の内容は非常に高度で、質問者も自分が納得する説明を受けるまでしつこく詳細なところまで聞いてきたため、さすがISSCRだなと冷や冷やしながら無事発表を終える事となった。

ポスター会場の隣には各メーカーの宣伝ブースがあり、PCR、ウェスタンブロット、免疫染色など基本的な実験手技のツールを改良したものを宣伝しているところもあれば、iPS細胞の自動培養装置といった最新技術に有用なツールを宣伝している企業もあった。国際学会さながらに国内外問わず多数のメーカーが紹介しており、こちらを見て回るだけでも色々なところで興味を引かれ、空き時間を楽しく有意義に過ごすことができた。

学会には3日間参加させて頂いたが、興味を持って話を聞いているとあっという間に時間が過ぎてしまった。若い研究者も多く、苦労話も共有することができ、個人的には勉強になったことはもちろんであるが、研究活動へのさらなるモチベーションを高めるよい機会となった。この刺激を忘れないうちに、より一層努力して、心筋細胞の細胞周期を研究を継続していきたいと思っている。最後になりましたが、今回の学会に参加するに当たってサポートして頂いたGCOE Young Researcher Support Planに感謝の意を述べたいと思います。このような機会を与えてくださり誠にありがとうございました。

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