慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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第71回日本癌学会学術総会

氏名

川村 直
GCOE RA
先端研究所 細胞情報研究部門

詳細

参加日:2012年9月19日~2012年9月21日

活動レポート

この度私は、第71回日本癌学会学術総会にGCOE Young Researcher Support Planを利用して参加し、口頭発表をしてきました。

今回の癌学会の特徴は、癌の免疫療法や癌微小環境のセッションがこれまでの学術総会よりも極端に多かったことです。今回の学術総会の会長が、がん免疫療法の第一人者であることも影響していると思われますが、それ以上に「がん免疫」という分野が注目されているからだと思われます。現在米国を中心に、免疫を負に調節するCTLA-4やPD-1、PD-L1といった膜分子に対する抗体の臨床試験が進んでいます。特に抗CTLA-4抗体 (薬剤名:ipilimumab)はメラノーマ・前立腺癌・肺癌など、様々な癌において延命効果があることが報告されており、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体など新規抗体薬剤への期待が高まっています。ただ、免疫療法だけで全ての患者の癌を完全に治療することは難しく、今後は免疫療法と既存の治療法(化学療法・放射線療法など)とを組み合わせて、より多くの癌患者において治療効果が出るようにしていくことだと思われます。

私自身は、癌学会初日の午後に「癌微小環境」というセッションで口頭発表をさせて頂きました。今回の発表は、メラノーマにおけるSTK24 (Serine/threonine-protein kinase 24)と免疫抑制との関連についてでした。発表の後の質疑応答では、STK24が新規分子標的となりうるか、担癌マウスでの腫瘍内浸潤したマクロファージの機能についてなど、今後の研究のヒントになるようなコメントを頂くことができました。また今回の学会発表が初めての英語発表ということで非常に緊張しましたが、良い経験をすることができたと思っています。初めての発表でまだまだ至らない部分が多かったですが、これらの反省点を次回に生かせるようにしていきたいと思いました。

残りの時間は癌幹細胞やエピジェネティック研究など、最先端の研究発表を聞くことができました。がん幹細胞を標的とした治療法の開発や、癌微小環境における間質細胞とがん幹細胞との相互作用など、がん幹細胞が癌研究において非常に重要であることを垣間見た。特に東京大学の宮園先生や、慶應の発生・分化生物学講座の田久保先生の講演は、がん幹細胞の分子病理についての理解を深める講演でありました。

今回の癌学会に参加して、がん研究は日々目まぐるしいスピードで進んでいることを、再認識しました。我が国の死亡原因の第1位はがんであり、年間の新患者発生数は70万人に達しています。画像診断技術の向上や分子標的薬などの開発が進み、早期の的確な診断や治療が可能となり、がん患者の5年生存率は向上している一方、未だに難治性のがんや転移・再発に対して有効な治療法が確立されておいません。今後、このようながん患者の治療に貢献できるような研究に携わっていきたいと思いました。

最後に、癌学会への参加をサポートして頂きました、グローバルCOE関係者の皆様に感謝申し上げます。

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