慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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10th International Society for Stem Cell Research 2012

氏名

平野 孝昌
GCOE RA
分子生物学

詳細

参加日:2012年6月13日~2012年6月16日

活動レポート

今回私は、横浜みなとみらい地区で行われたInternational Society for Stem Cell Research (ISSCR) 2012(国際幹細胞学会)に参加してきました。横浜は、私が生まれ育った町で、特に高校時代は、暇を見つけては意味も無く自転車でみなとみらいに行ったりしていました。今は東京で暮らしており、横浜は1時間程度で行けるのですが、なかなか行く機会が無かったので、とても良い機会になりました。実際にみなとみらいを歩いてみると、高校時代より高層ビルや施設が増え、景観も少し変わりましたが、それでも変わらない雰囲気で、僕にとって懐かしくまた心地よい所に変わりはありませんでした。

学会に関してですが、私は主に分子レベルの解析を行っている為、これまで幹細胞関連学会には参加したことが無かったのですが、今回は近場での国際学会ということもあり、発表と勉強を兼ねて本学会に参加することに致しました。新たな環境に触れられる楽しみな面と、不慣れな学会ですので不安な面もありました。例えば、幹細胞学会のスタンダードなドレスコードがどのようなものか(皆さんがキッチリした服装だったらどうしよう...)など、ちょっと違ったポイントで不安に思っておりました。ですが、実際に行ってみると皆さん自由でフランクな格好でしたので、気楽に参加出来ました。

本学会に参加して、まず要旨集の厚さに驚かされました。要旨集が厚いということは、それだけ参加者が多いという事です。すなわち、幹細胞研究が、今まさにHOTであるということを物語っています。実際に口頭発表会場に参加すると、多少異分野の私でもお名前を知っている有名な幹細胞研究者が沢山参加されていて、とてもエキサイティングでした。ポスター演題では、特にES/iPS細胞の生物学や、これら多能性幹細胞を用いた各組織への分化誘導や臨床応用への研究などが非常に多く見受けられました。現在の幹細胞医学のトレンドをビシビシ感じました。

私は、本学生理学教室岡野栄之教授と生殖細胞グループ(今村公紀先生)との共同研究で、マーモセットを用いた生殖組織特異的RNA結合タンパク質PIWIの解析について報告してきました。PIWIは、piRNAと呼ばれる25-30塩基長の小分子RNAと結合します。我々のゲノム内には、ゲノムから飛び出してはまた異なる場所に挿入し変異を起こすことで、ゲノムを破壊するものが存在します。これを転移因子(トランスポゾン)と言います。PIWI-piRNA複合体は、このトランスポゾンを抑制することでゲノムの変異から守る役割を担っています。このPIWIが欠損してしまうと、生殖細胞が正常に形成されなくなります。また最近では、がん組織でPIWIが発現し、その腫瘍の悪性度とPIWIの発現に相関性があるとの報告もあります。このように、我々にとって重要な働きをしているPIWIですが、マウスやショウジョウバエ等では詳細に解析が進んでいるのにも関わらず、ヒトを含む霊長類ではほぼ全く解析されていません。我々は、霊長類モデル生物マーモセットを用いたPIWIの詳細な解析を行う事で、生殖細胞維持機構の一端の解明に貢献出来るのではないかと期待しています。私のポスターを聞きに来て下さった方々の中に、マーモセットを用いた研究発表をされている方が何人かいらっしゃいました。今後はさらに多くの研究室で、マーモセットを用いた解析が行われていく予感を感じました。

最後に、本学会期間中に天皇皇后両陛下もお見えになられました。このことも、幹細胞研究が非常に期待を持たれているという証拠でしょう。私は、少し違う視点からではありますが、今後も幹細胞研究の一端に貢献出来ればと、改めて思いを強くする良い機会となりました。このような学会への参加をサポートして下さいました、グローバルCOEプログラム関係者の皆様に感謝申し上げます。

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