慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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Cambridge大学ガードン研究所 留学記

氏名

入江奈緒子
Visiting research fellow

Wellcome Trust Cancer Research UK Gurdon Institute, University of Cambridge・日本学術振興会 特別研究員
2006年-2007年21世紀COEプログラムRA、2008-2009年グローバルCOEプログラムRA、2010年グローバルCOEプログラムPD)

詳細

留学開始:2011年4月28日~

活動レポート

2011年4月28日、私はロンドン・ヒースロー空港に到着しました。英国紳士が傘をさない霧の町というイメージとは違い、雲ひとつない清々しい青空が私を出迎えてくれました。翌日、ケンブリッジ公ウィリアムとキャサリン妃の結婚式を控えたロンドンはとても華やいでいるようでした。

ケンブリッジはロンドンから北東に80キロほどで、電車で50分くらいのところにあります。ケム川を中心に歴史ある建造物が立ち並び、なかでも夕闇にそびえ立つキングスカレッジは幻想的かつ神秘的で、町を歩いているとまるでタイムスリップしたかのような気分になります。今私は、イギリス人ご夫妻のお宅に下宿しています。まさに下宿の名のとおり、食事以外はすべてご家族と一緒の生活です。昨年のクリスマスには、二人のご子息と7人のお孫さんと一緒にファミリーのパーティーに参加させていただきました。伝統的なクリスマスディナーやプレゼント交換など文化の違いを楽しみながら、心和む一時でした。またご夫妻には、風邪を引いたときの病院の手続きや生活の細々した不安などいろいろと助けていただき、研究に集中することができます。家には私の他にもう一人、薬剤師を目指し、ケンブリッジでは錠剤の糖衣の研究をしているドイツ人学生さんがいます。これまでもさまざまな国からの大学院生やポスドクが滞在しており、ご家族を通じて、病理学で脳腫瘍を研究するイギリス人ポスドク、英語教育を修士課程にて学び、現在オーストリアで教師をしている方、動物学で昆虫を中心に進化学を研究するチェコ共和国のポスドクの方などとも出会う事ができました。女性限定ということもあり、研究のはなしやその他の話に花が咲きます。私がこちらに着いた時期は、ちょうど日本のゴールデンウィークにあたる連休の真っ最中だったこともあり、これから始まる研究への期待と不安を胸一杯に連休が開けるのを待っていたことを思い出します。
いよいよ 初めて研究室に行く朝がやって来ました。家から自転車で颯爽と?ドキドキしながら向かいます。

ケンブリッジ大学は、2009年に創立800年を迎えました。私の所属するWellcome Trust Cancer Research UK Gurdon Institute、通称ガードン研究所は、1989年に発生生物学とガン生物学研究の推進を目的に設立された研究所で、大小20の研究グループがあります。研究所の食堂には所属する研究者の国籍を表す円グラフがはってあり、イギリス人は約4分の1で、その他4分の3は世界中から集まった研究者で成り立っているようです。ガードン研究所の名前の由来ともなっているジョンガードン先生は、ご高齢ですが今でも実験に携わっていらっしゃるそうです。ガードン先生の有名な実験であり高校生物の教科書にも紹介されているアフリカツメガエルの核移植実験は、未だに研究グループ内でもガードン先生が一番お上手であるとの事、私も頑張らなくてはと身の引き締まる思いです。

私の所属するアジムスラニ研究室は、初期発生や生殖細胞分化研究に名高く、いろいろな角度からのアプローチを展開しています。細胞外基質、シグナリング、転写因子、エピジェネティック修飾とその制御因子、ノンコーディングRNAなど、それぞれの技術のエキスパートと共に私の研究生活は学ぶことばかりです。研究室は現在15人のポスドクと博士課程の学生で成り立っています。 国籍はドイツ、ポーランド、韓国、中国、オーストリア、ウルグアイ、フランス、インド、イギリス、アイスランドなど様々です。とても和やかな雰囲気の中お互いの研究プロジェクトに協力しあい、研究の向上に対する意気込みを感じます。それでも研究に没頭しているばかりではありません。ケンブリッジ大学では、博士課程までの学生は全員、ポスドクも希望によりそれぞれのカレッジに所属します。夕方にはハリー・ポッターの映画に出てくるような趣のある広いホールにタキシードやマントを着用して集まり、長いテーブル囲みながら中には仄かなろうそくの明かりのみで夕食会をする習慣が今でも続いています。これは、世代を超えた様々な分野の学者や研究者の交流を目的としており、イギリスの中でもユニークな伝統を保持している数少ない大学なのだそうです。クリスマスには研究室全体のパーティーがあり、歴史あるMagdaleneカレッジでスラニ先生を囲んで伝統的なクリスマスディナーをいただきました。弾力のあるビーフステーキは飲み込むタイミングに四苦八苦しましたが、この素晴らしい経験は忘れられない良い思い出です。

ちなみに、スラニ先生は研究室まで徒歩で通っていらっしゃいますが、自転車に劣らず歩くのが速いのです。
休日に街を散策していたとき、物理学者のスティーブンホーキング博士を偶然お見かけしたときは、ケンブリッジならではのこととしばし興奮してしまいました。

私は慶應義塾大学大学院医学研究科にて、21世紀COE・グローバルCOEリサーチアシスタント、またグローバルCOE Step-up post-docとして科学研究の基本を学ばせていただきました。その間に、1か月のオーストラリア・St. Vincent研究所での研究技術習得、2か月間のスペイン国立がん研究所での共同研究の遂行という貴重な経験をさせていただきました。諸先生方をはじめ多くの皆様にご指導とご支援をいただき、またお世話になっております。この貴重な機会を与えて下さったことに心から感謝申し上げます。一つでも多くの事を学び生かせるよう努力し、日々励んでいきたいと思っております。

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