慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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53rd ASH (American Society of Hematology) Annual Meeting

氏名

國本 博義
助教(有期・研究奨励)
血液内科

詳細

GCOE Young Researcher Support Plan(2011年度)
参加日:2011年12月9日~2011年12月14日

活動レポート

私は2011年12月9日から12月14日まで、53rd ASH (American Society of Hematology) annual meetingに参加した。今年はCalifornia州San DiegoのSan Diego Convention Centerでの開催であった。私にとって今回のASHは昨年に引き続き2度目の参加であった。初日は"Myeloid Meeting"に参加し、造血幹細胞や骨髄系腫瘍の病態に関する基礎的な最新知見に触れることができた。2-4日目には、造血器腫瘍に関するeducational session、scientific session、そしてposter sessionに参加し、最新の病態解析研究の成果、新薬の開発動向、臨床試験成績の結果などを耳にすることができた。特に造血器腫瘍の臨床検体を用いた病態解析に関する研究では、1年前の学会では想像もできなかった全く新しい知見が次から次へと発表されたり、ヒト腫瘍細胞の全ゲノムを短期間でシーケンスして新たな遺伝子異常を次々と同定するなどの知見が多くみられ、「日進月歩」どころか「分進秒歩」といえるようなこの領域の著しい進歩を実感した。

昨年と異なり、今年は2日目のposter sessionに自身の研究成果を報告する機会に恵まれた。演題名は"Disruption of Tet2 Leads to Enhanced Self-Renewal and Competitive Repopulating Capacity of Fetal Liver Hematopoietic Stem Cells"であり、マウス胎仔肝造血系におけるTet2の生理学的機能を解析した内容である。TET2遺伝子異常は骨髄系・リンパ系造血器腫瘍に広く共通してみられる遺伝子異常であり、近年大きな関心を集めている。我々はTet2 gene-trapマウスを用いて、マウスTet2の胎仔肝造血系における機能を明らかにすることを通じてヒトTET2機能喪失による造血器腫瘍発生の分子メカニズムの一端を明らかにし本学会で報告した。この遺伝子に関心のある世界中の研究者と有意義なdiscussionをすることができ、今後の自身の研究の方向性を考えるよい機会となった。またASH Abstract Achievement Awardを頂くことができ、大変励みになった。

今回の学会では、自分が携わる造血器腫瘍の病態解析研究の圧倒的な進歩の速さを目の当たりにした。しかし一方で、流行に惑わされず独創的な発想のもと、造血器腫瘍の病態解明のために一貫した姿勢で研究を推し進めていくことの重要性も再認識した。来年以降のASHでも、自身の研究成果を発信しこの分野に貢献できるよう努力していきたい。

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