慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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Key Forum in developmental biology and regenerative medicine
参加報告

氏名

門多 由恵
2010年GCOE RA
一般・消化器外科・大学院生(博士課程)
 

活動レポート

"KEY Forum in Developmental Biology and Regenerative Medicine- Supported by Global COE and IMEG, Kumamoto University" に参加させていただきました。2日間の日程で午前午後の講演の間にposter sessionがあり、私は'Reconstruction of the hepatic microvasculatures with decellularized liver matrix scaffold and mesenchymal stem cells'という表題で提示させていただきました。

'decellularized liver matrix scaffold'とは肝臓からすべての細胞成分を除去する脱細胞化技術によって作製された半透明の器で、肝臓特有の細胞外マトリックス成分と脈管構造の骨組みだけが残存する3次元構築を呈しています。この'脱細胞化肝臓'を足場として全肝レベルでの臓器再生を目指すのですが、 脱細胞化の過程で細胞外マトリックスや脈管構造が脆弱化してしまうため、特にmesenchymal stem cellsの可能性に着目して肝特有の微細脈管構造の再現を目指しています。

近年研究の盛んなES細胞やiPS細胞といった人工幹細胞から作製された細胞はその分化傾向を遺伝子レベルで調整され運命づけられながらも、それらの細胞を養う背景は非常に重要です。今回このKey Forumに参加させていただき、特殊な合成膜/マトリックスを用いたインスリン産生膵β細胞やアルブミン産生肝細胞への分化誘導、他に3次元構造を用いたES細胞の培養等を特に興味深く学ばせていただきました。細胞は元来単独ではなく、背景のマトリックス内で支持され、成長因子やその他のサイトカインの分泌により調整を受けながら存在しており、細胞間相互作用、生体という大きな器の中での動態も含めて、こういった細胞の培養背景には今後さらに研究が進んでいくことと思います。我々の研究では脱細胞化肝臓という肝細胞の古巣をそのまま利用した臓器再生を試みていますが、果たして将来的に生体を維持あるいは補助できるレベルでの肝臓再生が可能であるか、vitro/vivoでの評価を含めて多くの課題を途上に認めています。しかしながら、より生体に近い形で肝細胞を養う背景として、この脱細胞化肝臓を大事にしていきたいという思いも新たにいたしました。今後、この脱細胞化肝臓内にiPS細胞から分化誘導した肝細胞を用いてオーダーメイドの肝臓を作製するということが一つの目標ですが、京都大学の山中先生や慶應義塾大学の岡野先生のご講演を初めとしてiPS細胞の特性や各内臓細胞への分化誘導に関しましても大変に貴重な勉強をさせていただきました。

歴史深い熊本の地で'Developmental Biology and Regenerative Medicine'というテーマの元、多くの先生方が熱くこの分野での研究を進めていらっしゃるその内容を拝聴でき、再生医療の深遠さを実感しましたが、同時に興味も深まりました。また、大学院生という同じ立場で研究を進めている先生方のポスター発表や会話の中でも良い刺激を得、慶應GCOEのメンバーとしてこのKey Forumに参加させていただいたことに改めて感謝申し上げております。

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