慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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41st Society for Neuroscience (Washington DC, the United States of America)及び海外視察

氏名

石井 聖二
GCOE PD(特任助教)
生理学

詳細

GCOE Young Researcher Support Plan(2011年度)
参加日:2011年11月12日~2011年11月27日

活動レポート

今回私は、ワシントンで行われた米国神経科学学会に参加しました。神経科学者にはSfNと呼ばれる世界最大規模の神経科学の学会です。今年は約32000人が参加したそうです。
成田からワシントンへの直行便で11月12日にダレス国際空港に到着しました。実は私は海外には今まで何度も行ったことがあるにもかかわらず、アメリカには生まれてから一度も行ったことはありませんでした。空港からタクシーでワシントンの中心部に向かいましたが、目に映る光景すべてがとても新鮮でした。学会の一日目が始まっていたのですが、長時間のフライトで疲れていたので、宿泊するホテルであるThe Liaison Capitol Hill Hotelに向かいました。
学会2日目はColumbia大学のAsa Abeliovichと話をしました。実は今回のアメリカ滞在は学会に参加するだけでなく、海外留学の視察およびラボ訪問も兼ねているのです。Asaは複数の転写因子を導入することにより、アルツハイマー病患者の線維芽細胞から直接ニューロンを誘導することに世界で初めて成功した研究者です。彼に現在の私の研究を説明しました。また当研究室のOBで現在Asaの研究室でポスドクとして研究をしている山下先生と夕食を一緒に食べながら、彼の研究室でどのような研究が展開されうるのかを聞くことができました。

学会3日目ですが、午前はヒト細胞を用いたDirect Reprogrammingと神経疾患への応用に関するシンポジウムに出席しました。世界で初めて線維芽細胞から直接ニューロンを誘導することに成功したStanford大学のMarius Wernigが、線維芽細胞から直接神経幹細胞を誘導することに成功したことなど、論文未発表の最新の成果を発表していました。昼間から私はポスター発表を行いました。ポスター発表のコアタイムは1時間だけだったのですが、ポスターを貼った瞬間からさまざまな方から質問を受け、4時間ほど説明し続けなければならないという状況でした。しかも質問の内容もなかなか鋭く、これは日本の学会ではなかなか味わえないことでした。また私が今まで読んだことのある論文を書いている研究者がポスターを聞きに来るので、逆に私が質問をするということもありました。正直ここまでこの学会のポスター発表が盛り上がるとは思いませんでした。その夜には世界有数の研究室が発表を行う神経幹細胞研究のシンポジウムが開催され、やはりそこでも前述のMarius Wernigが線維芽細胞から直接オリゴデンドロサイト前駆細胞を誘導することに成功したことを報告していました。

学会4日目ですが、Special LectureとしてニューヨークのThe neural stem instituteのSally Templeの講演がありましたので聞きました。彼女は神経幹細胞の存在を世界で初めて証明した神経幹細胞研究のパイオニアとも言える人なのですが、数百人から数千人も聴衆がいるようなホールで最近の彼女の神経幹細胞に関する研究を発表していました。学会最終日は少し余裕がありましたので、ワシントンの国立美術館に行き、絵画鑑賞をしました。ワシントンの美術館は入場無料で、かつ名画も数多くあり大変お薦めです。
学会終了後は海外留学のための複数の研究室の視察を行いました。初めにワシントンにあるChildren's National Medical Center、次にニューヨークにあるMount Sinai University、そしてニューヨーク州のオールバニにあるThe Neural Stem Cell Instituteを訪問しました。

特に最後に訪問したThe Neural Stem Cell Instituteについて非常に印象が強かったです。オールバニはニューヨーク州の州都ではありますが、決して大きくはない地方都市です。しかし研究室の主宰者は前述のSally Templeで、良質な論文も定期的に出している研究室です。研究室全体は20~30人ほどだと思いますが、研究スペースが広々としており、余裕を持って研究ができているという印象でした。またオールバニに到着した夜にSallyに一緒に夕食を食べましょうと誘われたのですが、なんとSallyの家でしかもSallyのご家族と一緒に食べました。このアメリカ流のおもてなしにはとてもびっくりしました。夕食後も研究に関するディスカッションができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。

オールバニを出発し、次に共同研究先であるボルチモアにあるJohns Hopkins Universityに向かいました。私が宿泊したホテルは海のそばにあり、毎日とてもいい気分で過ごすことができました。実はボルチモアに訪問した日はThanksgiving dayと呼ばれるアメリカの祝日であり、日本で言う正月のように街も閑散として、また休業の飲食店も多かったです。そんな日に訪問したにもかかわらず、共同研究先の澤研究室は日本人が多数在籍していることもあり、日本人研究者がいつものように実験していました。他の人種と比較して、日本人がいかに真面目で勤勉であるかをアメリカで思い知ることができました。ちなみにアメリカ滞在の最終日はThanksgiving dayの翌日の通称Black Fridayと呼ばれる日でした。ニューヨークにいたのですが、日本で言う正月の次の日の「初売り」に当たるような日で、街中が買い物客で賑わっておりました。このように意外な形でアメリカの文化を思い知ることができました。

約二週間アメリカに滞在し、複数の研究室を訪問することができましたが、研究をする上でも日本は研究設備などの点で非常に恵まれている環境であると再確認することができましたが、同時にやはりサイエンスはアメリカを中心に回っているという事を実感することができました。最後になりましたが、そもそもこの学会に行くことができ、そして私自身の研究にとって有益な情報を得ることができたのも、グローバルCOEのおかげであり、Young Researcher Support Planによるサポートのおかげです。日本でも約2週間もの滞在を補助してくれるような制度はなかなかないのではないかと思います。この場を借りて、深く感謝の意を述べたいと思います。本当にありがとうございました。

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