慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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8th IBRO2011 WORLD CONGRESS OF NEUROSCIENE (Florence, Italy)

氏名

石井 聖二
特任助教(GCOE PD)
生理学教室

詳細

GCOE Young Researcher Support Plan(2011年度)
参加日:2011年7月14日~ 2011年7月18日

活動レポート

さて、今回私が参加した学会はイタリアのフィレンツェで行われたIBROです。この学会は4年に一回行われるまるでオリンピックのような学会で、世界各地で開催されています。ちなみに前々回の開催場所はチェコのプラハ、前回の開催場所はオーストラリアのメルボルン、そして次回の開催場所はブラジルのリオデジャネイロだそうです。4年に一回という事もあり、また私が興味のある研究をしている研究者が口頭発表を行うということもあらかじめわかっていましたので、本サポートを受けましてこの学会に参加することといたしました。
7月12日の深夜に、国際線が発着できるようになった話題の羽田空港からパリ経由フィレンツェ行きの飛行機に乗りました。計16時間かけてフィレンツェの空港、アメリゴ・ヴェスプッチ空港に到着しました。余談ですが、このアメリゴ・ヴェスプッチはフィレンツェ生まれのアメリカ州を探検したイタリアの探検家にして商人で、アメリカの由来になっている歴史上の偉人です。ヨーロッパはパリのシャルル・ド・ゴール空港のように人物名が空港名になることが多いのです。
アメリゴ・ヴェスプッチ空港からタクシーに乗り、約20分かけて宿泊先のホテルに到着しました。この「ロロロージョ」という名前のホテルはイタリア語で時計という意味だそうで、ホテル内の至る所に時計が飾られており、おしゃれで快適なホテルでした。またホテルの位置がサンタ・マリア・ノ・ヴェッラ広場という場所に面しており、とても開放感のある場所でした。学会が始まるまで少し時間がありましたので、フィレンツェの中でも有名な建築物であるドゥオーモ(大聖堂)や、ヨーロッパ有数の美術館と言われる世界的な名画も多いウフィツィ美術館、ダビデ像で有名なアカデミア美術館を探訪しました。

さて、肝心の学会ですが、会場はバッソ要塞という文字通り城壁に囲まれた建物の中で行われました。計5日間という比較的長い学会の期間ですが、しっかりすべての情報を見ようとするとかなり大変ですので、私の専門としている分子神経生物学、幹細胞生物学の発表を中心に情報収集を行いました。特に私自身興味を持っている大脳皮質における興奮性ニューロン(投射型ニューロン)および抑制性ニューロン(介在性ニューロン)の分化制御やその機能に迫るシンポジウムや、神経発生や神経幹細胞の分化制御におけるエピジェネティックな修飾などの話題が中心のクロマチンリモデリングのシンポジウムを聞きました。また、ここには書ききれないほどの情報収集もできましたし、中には私自身の研究に役立つような情報も得ることができ、有意義な時間を過ごすことができました。また、今回の学会では神経系疾患の話題がかなり多かったので、普段なじみのない自閉症やてんかんの疾患モデルマウスに関して勉強できたのは本当に良かったと思います。私自身のポスター発表に関しては、私の研究分野の専門家ではない研究者たちにも質問されましたので、いつも受ける質問とは違って新鮮でした。

学会会場は非常にリラックスした雰囲気で、会場内ではイタリアンジェラートが売られていました!またイタリアで行われている学会ですので、当然のごとくイタリアの大学からの発表者がかなり多かったです。ポスター会場を眺めて気付いたこととして、今や私も含めましてES細胞やiPS細胞を駆使した研究が神経科学の世界でも多数見られるようになったのですが、マウス脳を用いたin vivoのトランスジェニックマウスやノックアウトマウスなどの研究が非常に盛んで、またそれが緻密な仕事が多いことに驚きました。イタリアに行くまでは、イタリア人に対してはルールに縛られない、自己主張が強い、時間にルーズといったイメージがありました。実際に街中を歩いていると、イタリア人は良い意味でマイペースな人たちだと思っていたので、研究がきめ細かい仕事が多かったのは本当に意外でした。また、研究に関する議論も非常に熱心でした。余談ですが、かのレオナルド・ダ・ヴィンチは内部を知ることで、絵をより美しく真実に近づけようとする目的から、初めに馬の解剖を行い、後に人体の解剖に立ち会い、自分自身でも行い、極めて詳細に書きこんだ解剖図を多数作成しているそうで、人体解剖学のパイオニアと考えられています。この解剖学を含むダ・ヴィンチの多岐に渡る研究は、13,000ページに及ぶノートに、芸術的な図と共に記録されているそうで、このダ・ヴィンチの研究に対する熱意を受け継いだ研究者たちがイタリアの神経科学者なのではないかというのが私の個人的な憶測です。
また、このイタリア滞在中に偶然にも女子サッカーワールドカップ、いわゆるなでしこジャパンの日本対アメリカの決勝戦を宿泊先のホテルのそばのアイリッシュ・パブで、時差なしで観戦することができました。そのパブの客もおそらくほとんどがこの学会に参加したアメリカ人の研究者で、私の前に座ったアメリカ人の夫妻もまさにこの学会に参加するためにやってきたアメリカの企業の方でした。アメリカのゴールが決まるたびに「U・S・A!!」の大合唱が起こっていましたが、さすがに日本がPK戦で劇的な勝利した後は、私が大興奮していたのに対し、パブ全体が一瞬シーンとしていました。ただ、様々な研究者に「congratulations!!」と言われました。サイエンスだけでなく、サッカーも国境を越えるものだと実感しました。
以上のように、一週間イタリアを満喫しましたが、サイエンス、そしてサイエンスでない部分でも日本との大きな違いを実感することができました。そしてやはり研究をする上でも日本は非常に恵まれている環境であると再確認することができました。そもそもこの学会に行くことができ、そして私自身の研究にとって有益な情報を得ることができたのも、グローバルCOEのおかげであり、Young Researcher Support Planによるサポートのおかげです。この場を借りて、深く感謝の意を述べたいと思います。本当にありがとうございました。

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