慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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浜松ホトニクスPETセンター

氏名

井上 賢
GCOE RA
脳神経外科/生理学

詳細

GCOE Young Researcher Support Plan(2011年度)
参加日:2011年11月7日~2011年12月2日

活動レポート

今回私は、海外ではなく国内の共同研究でサポートして頂きました。
研究施設は、静岡県浜松市にある浜松ホトニクス株式会社のPETセンターです。

浜松ホトニクスは、光関係の実験をしている研究者ならほとんどの方がご存知かと思いますが、半導体レーザー、フォトダイオード、光電子増倍管、分析用光源など光関連で高い技術力を持つ会社で、光電子増倍管では世界シェア約90%を占めています。PETセンターには、動物研究用PET装置や小動物用PET装置2基および小動物用CTがあり、サイクロトロンも所有しており、共同研究の場として研究施設提供され、多くの共同研究や、創薬研究などが行われております。

PET研究における最大の障壁は、ポジトロン核種の半減期です。ポジトロンを放出する主な元素は、酸素、窒素、炭素、フッ素などですが、それぞれ半減期が2分、10分、20分、120分と非常に短く、フッ素を除き、サイクロトロン設備を併設していないと、薬剤を搬送・投与するまでに、減衰してしまいます。フッ素に関しては、比較的半減期が長いため、FDGという化合物のみが販売され、糖代謝が亢進している腫瘍などの検出の目的に臨床では使用されています。脳研究の分野では、脳では糖代謝がもとから高いため腫瘍の検出が難しいことがあったり、小動物研究では動物を眠っている状態で撮影するので脳の代謝が下がってしまい、脳虚血や変性疾患の検出が難しくなったりします。そのため、脳研究にはサイクロトロンを所有する施設で、糖以外の化合物で実験することが重要となるのです。

私の研究テーマは、『霊長類(マーモセット)脳梗塞モデルの確立と、臨床応用へ向けた脳梗塞細胞療法』なのですが、今回の共同実験では、マーモセットの脳梗塞における亜急性期と慢性期の、行動評価とPETによる評価が目的です。小動物用PETを有し、サイクロトロンを併設しFDG以外の核種を取扱える数限りある施設のうちの一つである浜松ホトニクスとの共同実験ができるようになったことは、非常に幸運なことでした。

実験施設の設備としてはかなり充実していますが、場所が浜松駅からも離れているため、宿泊施設からの移動は1時間かかる上、バスは1日数本しかなかったり、浜松駅周辺と主要道路沿いに点在する程度しか食べる場所がなかったりと、車やタクシーがないと生活できない場所でもあるという欠点もありましたが。

私の研究の土台となる脳梗塞モデルの作成をする設備としては、写真のようにCアームと呼ばれるX線透視装置も有しているため、画像を見ながら中大脳動脈閉塞モデルを作成でき、手術がより早く正確にできるようになったのも非常に助かりました。手術翌日にはCTを撮影し、合併症が起きていないかどうかcheckもできました。このように実際の臨床に近い形で検査を進めて行けました。目的としていた脳梗塞の症状が出現し、術前、術後1週間、術後4週間でのPET検査を行いました。現在、データをまとめている所ですが、行動評価とPET検査の結果に相関がありそうな結果が出そうです。
今回の研究で、脳梗塞モデルの自然経過としてのデータがまとまると、今後の細胞療法の有効性を評価する基準とすることができそうです。

最後になりましたが、恵まれた実験施設への出張をサポートしていただいたGCOE Young Researcher Support Plan制度に深く感謝申し上げます。

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