慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
English

Young Researchers' Trip report


ホーム > Young Researchers' Trip report > Key Forum in developmental biology and regenerative medicine 参加報告

Key Forum in developmental biology and regenerative medicine
参加報告

氏名

細川 健太郎
GCOE PD
発生・分化生物学

活動レポート

2011年9月8日-9日に熊本大学で開催されたKEY Forum in Developmental Biology and Regenerative MedicineにGCOEプログラムのサポートを受けて参加して参りました。

本会は、熊本大学 生命科学系 Global COE Program「細胞系譜制御研究の国際的人材育成ユニット」主催、慶應義塾大学グローバルCOE プログラム『幹細胞医学のための教育研究拠点』共催にて行われたものであります。

参加者の多くは国内からの参加でしたが、環太平洋地域(北米、台湾、東南アジアなど)からの参加も多く、世界の中でもトップレベルの発生・再生分野の研究者が集う国際学会であります。最新の学術的な動向を肌で感じられることや、国際的な研究者ネットワークを築くのに最適な場となっておりました。

今回の学会会場は、熊本大学工学部黒髪南地区キャンパスの工学部百周年記念館で、古くからある城下町、熊本市の中心である熊本城からみて東方に位置しております。
本会参加の国内研究機関としては、熊本(Kumamoto)大学、慶應(Keio)義塾大学、神戸(Kobe)理化学研究所、京都(Kyoto)大学などから多くの参加者がありました。

本会の特徴のひとつとして、発生分野における発表が充実していることが挙げられます。分野としては腎臓、腸管、中枢神経系、骨髄造血系、膵臓など、多岐にわたっておりました。例として、Hans Cleversのグループからは、腸管上皮幹細胞のLgr5をジェネティックに蛍光標識にした遺伝子改変マウスを用いて、生体内の組織構築について大変明確に示しておりました。また、一見同じニッチにある複数の幹細胞から成り立っているように見える腸管柔毛/クリプトでも、個々の幹細胞に蛍光標識して観察してみると、対称性の分裂と非対称性の分裂のバランスによって支配されており、最終的にはより頻繁に対称性の分裂が起きている幹細胞が柔毛/クリプトの主構成細胞となっていく過程を示していました。さらに、最近誌上で報告したLgr5がR-spondinとの結合を介してWntシグナルを活性化するといった内容の話も話題性があったと思います。
他の分野としては、熊大の西中村先生やJordan Kreidbergのグループから腎臓の前駆細胞についての発表があり、遺伝子欠損マウスのChIP on Chip解析の結果をもとに、組織培養中にモルフォリーノを用いた遺伝子発現抑制スクリーニングを行ってターゲット遺伝子の発見に繋げているところが大変印象的でした。
組織幹細胞研究・ES細胞・iPS細胞の各分野において、特定の分子の機能解析を行う際、近年では遺伝子欠損動物とChIP-Chipによる大規模な解析方法がパワーツールとなっていることを改めて認識いたしました。

また、一方で本会の再生分野においては、iPSに関する研究が多かった印象ですが、今回のメインゲストのひとり、山中教授は日本でも大きく報道された新規山中因子とも呼べるGlis1の発見を報告されるとともに、発生学的な研究としてECAT15の欠損マウスの解析についても発表を行うなど、本会の発生・再生両分野における開催主旨に沿った内容の発表を行っておりました。その他にも、自治医大からは、iPS細胞の作製応用としてブタiPSやサルiPSの作製方法についての報告があり、作製に用いるツールを変更することで、タイプの異なるiPS細胞ができることや、より品質の高いものを採れる効率的な方法を開発していたのが印象的でした。ヒトiPS細胞の応用は現時点ではそれほど簡単なものではないため、これらの改良された作製方法から今後ますますヒトiPSに関する応用が加速されることが予想されます。

国際的なコネクションというものは、個人型の研究、或いは研究室単位、学校単位での研究の運営/推進を図る上で、大変重要であるということは以前より言及されてきたことだと思います。特に、末端にある若い研究者や学生などが国際学会に参加し、当人の研究の国際的な位置付けや、その分野における最先端で何が行われているかを実際に目で見て感じる機会を持つことは、それらの最も基盤に当たる部分だと考えられます。このことを実現していくためにも、海外研究者の実際の発表を聞き、直接的なコンタクトや情報交換することを常に心掛けていくことが大切であると考えられます。こうして研究に関して話し合うことは、研究についてより詳細な部分を聞けたりするだけでなく、実際に共同研究へと発展し、当人の研究レベル自体を大きく底上げできる可能性を秘めていると思われます。

GCOEプログラムは、グローバルに活躍できる日本の若い人材の育成に重要な役割を果たしていることは間違いありません。今後もこうしたプログラムが充実していくことで、実際に人材の育成と研究レベルの向上に繋がっていくと考えられます。

今回、自身の研究が当該分野における位置付けや方向性を確認することができ、また研究者同士の交流も行うことができたため、非常に有意義な学会活動となりました。最後に、本会参加をサポートして頂いたGCOEプログラムに謹んで御礼申しあげます。

Copyright © Keio University. All rights reserved.