慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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Young Researchers' Trip report


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2011 ASCB (The American Society For Cell Biology) 51st Annual Meeting

氏名

古澤 純一
GCOE RA
微生物学・免疫学

詳細

GCOE Young Researcher Support Plan(2011年度)
参加日:2011年12月3日~2011年12月7日

活動レポート

今回私はGCOE Young Researcher Support Plan制度を利用して 2011年12月3-7日までアメリカのコロラド州デンバーで開催された2011 ASCB (The American Society For Cell Biology) 51st Annual Meetingに参加してきました。ASCBはアメリカの細胞生物学会が主催しており、その分野を代表する著名な先生方のシンポジウムをはじめ、開催期間中に100以上のセッションと3000演題以上のポスターが展示される大規模な学会です。私もポスター発表を控えていましたが、初めての国際学会発表に単身での参加であったため出発前は非常に緊張していました。また、人生で2回目の海外ということもあり、現地での生活についても不安が頭をよぎる状況でした。どうにか飛行機の乗り継ぎをこなし、バスでの移動を経てデンバーに到着したときには言うまでもなく安堵しました。

デンバーはコロラド州の州都でロッキー山脈の麓にあります。気温は低く、私が訪れたときは連日のように平均気温が-10℃以下という寒さでした。標高が約1マイル(約1600メートル)に位置することから、マイル・ハイ・シティーの愛称で呼ばれ、近辺にはスキー場が多く、山岳リゾートの拠点としても発展しており、観光都市としても注目を浴びています。私が到着した夜は中心街でクリスマスパレードが行われており、賑やかな雰囲気も感じられました。


デンバーの街並み

私は当研究室で発見したナチュラルヘルパー細胞という、T細胞やB細胞、NK細胞などの既存のリンパ球とは異なる、自然免疫に関与する新たなリンパ球について研究をしています。ナチュラルヘルパー細胞は寄生虫感染時やアレルギー発症時に破壊された内皮細胞、上皮細胞などから放出されるサイトカインであるIL-33に反応し、Th2サイトカインとして知られているIL-5、IL-6、IL-13を多量に産生します。その産生量が他のIL-33反応性の細胞であるマスト細胞や好塩基球よりも圧倒的に多いことがこの細胞の特徴であり、したがってNH細胞は生体内がIL-33に曝される状況下に陥ったときに働く最も主要な細胞であることが考えられます。しかしながら、NH細胞のサイトカイン産生制御機構は未知の状態であり、NH細胞がいかにして既知の細胞と比べて強力なサイトカイン産生を誘導できるのかを明らかにすることができれば、自然免疫系におけるNH細胞の役割や制御法の解明につながることが期待されます。そのため、私は現在NH細胞のIL-33シグナル伝達経路に着目し、これを介したTh2サイトカイン産生の制御機構の解析を行なっています。

今回の学会に参加する直前に、私は自身の研究内容を日本免疫学会にて発表させていただきました。そこではNH細胞が生体内でどのような役割を担っているかということが中心のディスカッションで参加者の方々と盛り上がりました。一方、細胞生物学会であるASCBはシグナル関連の演題が多く、細胞種や注目している分子の違いはありますがシグナル伝達経路の解明を目指した研究が目立っていたように思います。発表の機会を頂いたポスターディスカッションでは、海外の様々な研究者と討論を行うことができました。その中にはシグナルの解析を行う上ではっとさせられるような意見も多く、今後の研究を進めていく上で良い刺激になりました。また、英語ということもあって、最初は答えられなかったらどうしようという不安から緊張していましたが、近くでポスター発表をしていた方がNH細胞ってどんな細胞?と気さくに話しかけてきてくださり、説明しているうちに徐々に国際学会という場の雰囲気にも慣れることができ、興味をもったポスターの発表者の方にこちらから質問をすることもできました。心配していた海外での生活面でも日を重ねるごとに楽しさを覚え、現地の方たちと雑談を交わして笑い合うといったこともあり、不自由なく過ごすことができました。そのせいか、帰国する日には少し寂しさを感じてしまいました。

2011 ASCB 51st Annual Meetingを通じて最先端の知識や積極性の大切さを学ぶと共に、わずかではありますが海外での研究や実生活がどのようなものかを理解したように感じました。この経験を日々の研究生活に還元し精進していきたいと思います。最後になりましたが、貴重なチャンスを提供していただいたGCOE Young Researcher Support Plan制度に深く感謝申し上げます。


学会会場のコロラドコンベンションセンター

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