修士課程について

医学研究科委員長 金井隆典

医学・生命科学分野の飛躍的発展には、バイオインフォマティックス、ティッシュエンジニアリング、数理生物学など、医学と社会科学、数学、工学などとの異分野融合が欠かせません。そこで、本学医学研究科修士課程は、異なるバックグラウンドを有する多彩な人材を育成することによって、それぞれの科学分野の発展に加えて、『基礎・臨床一体型医学・医療の実現』をめざして1994年に設置されました。

本修士課程では、自然科学領域(歯学・獣医学を除く)や人文・社会科学領域の学部卒業生を対象とし、個々の学生のバックグラウンドや研究志向を十分に活かし、将来、世界中のさまざまな分野で活躍できる人材を養成します。この目的のため、プログラムには様々な工夫が施されています(カリキュラム)。特に、慶應義塾大学病院と直結した臨床医学体験実習(さまざまな医療現場の見学)や、医療に直結した講義・臨床研究のトレーニングは、本修士課程ならではのものであり、臨場感を以て医学・生命科学を学ぶことができます。

基礎・臨床医学研究分野において、「再生」「発生」「免疫」「がん」「神経」「代謝」「老化」「疫学」などの領域におけるトップレベルの研究室が、博士課程への進学と連動して専門的かつ学際的な教育を行います。経済的理由により修学が困難な学生を援助するためのさまざまな奨学金制度も充実しています。

みなさんが入学し、実際の研究活動において痛感されることとは思いますが、この競争の激しい医学研究の世界で、国内外のトップレベルの研究者としのぎを削り、生き残っていくためには、幅広い知識と優れた技術を身に付けることは勿論のこと、自分だけのオリジナリティーを確立することが最も重要です。本修士課程ではこの理念に基づき、これまでの20年余りの間に、多くのユニークで優れた人材を輩出し、アカデミア、企業を含め、さまざまな社会での活躍を後押ししてきました(進路)。 医学・医療に興味はあるけれど、自分のバックグラウンドを考慮すると敷居が高いと感じている皆さん、是非とも慶應義塾大学大学院医学研究科の門を叩いてみてください。皆さんのバックグランド、経験を最大限に生かせる場が必ずそこにあります。世界でオンリーワンの領域を一緒に開拓しましょう!(募集要項)

カリキュラム

入学者の中に、人文・社会科学領域の学部の卒業生もいることから、1年目に医学の基礎知識を養うための基礎医学系および臨床医学系の科目があります。医学研究の最前線を担う研究者、患者さんを現場で診ている臨床医による講義で、幅広い医学知識を身につけます。

また、慶應義塾大学が総合大学であるメリットを生かしたカリキュラムも豊富です。病院を併設したキャンパスならではの医療現場に直結した内容の講義や、他研究科の講義を、自分の興味に応じて自由に選択することができます。たとえば1年次には、医学系では「代謝」や「再生医学」、「免疫」、「神経」、「がん」などのテーマが用意されています。科目によっては臨床医学の現場に立って実際に学ぶことができるため、貴重な経験を積むことができます。

2年次には、引き続き各所属研究室で研究活動を行います。また、薬学部のある芝キャンパスの見学ツアーも用意されています。

修士課程の最大の目標は修士論文の提出です。2年間の研究の集大成を論文にまとめ、発表会でプレゼンテーションを行います。その内容を第一線で活躍する教授陣が審査し、問題点の指摘のみならず、将来研究を発展させるために必要な多くの貴重なアドバイスが与えられます。

このような教育・研究を通して大学院博士課程への進学、製薬企業やME機器・遺伝子工学関連企業および健康科学分野の研究・教育機関などで活躍できる資質と能力を有する人材を育成しています。

2007年度に、文部科学省の支援を受けて、がん医療に携わるがん専門医療人を養成する「がんプロフェッショナル養成プログラム」がスタートしました。

2020年度に、慶應義塾大学から世界を変えるバイオテック産業を創造する人材育成を目的とした「アントレプレナー育成コース」を開設しました。コースの学生募集は2023年度をもって停止しますが、2024年度入試を経て修士課程に入学した学生は誰でも履修できるようになる予定です。