博士課程について

医学研究科委員長 金井隆典

医学部および6年制の歯学部、獣医学部、薬学部の卒業生あるいは修士課程修了者を対象としています。医学研究系専攻では、基礎医学と臨床医学の関連分野において独創性の高い基礎研究や疾患の病態メカニズムの解明や難病の治療法の開発に繋がる研究を遂行できる研究者を育成します。医療科学系専攻では、先端医療に結びつく優れた臨床研究の遂行、および、そのプロトコールのデザインが出来る人材、そして文部科学省のがんプロフェッショナルプログラムに対応した診療科横断的な癌の臨床の専門家を目指す人材を育成します。

カリキュラム

慶應義塾大学医学部は1873(明治6)年創設の「慶應義塾医学所」を経て1920(大正9)年に私学で最初の大学医学部としてスタートし、医学研究科博士課程は1956(昭和31)年4月に新制大学院として開設され、基礎系の3専攻系(生理系、病理系、予防医学系)と臨床系の2専攻系(内科系、外科系)の5専攻により長年運営されてきました。しかしながら、慶應医学の祖である北里精神、すなわち「基礎医学と臨床医学の連携を緊密にし、学内は融合して一家族の如く」の心情に立脚した基礎・臨床一体型の研究体制が、COE(Center of Excellence)プログラム採択以降、軌道に乗り盛んになって来ました。その結果、臨床系の大学院生が総合医科学研究センターなどの優れた研究施設をフルに活用し、基礎教室と臨床教室の共同研究の成果が発表されることが多くなり、これらを融合させ、ひとつの学問体系として発展させるため、これまでの5つの専攻を「医学研究系専攻」として一つにまとめました。

2007年度には、臨床の各診療科の枠をこえ、基礎・臨床の英知を結集させた質の高い癌の専門家を育成しようという機運が高まり、文部科学省のサポートを受けて「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン(がんプロ)」がスタートしました。このような人材を、学位授与が出来る大学院の教育の一環として養成する必要性が出てきました。また外国と比較して臨床研究が弱いとされるわが国において、New England Journal of Medicineに掲載されるような優れた臨床研究をデザインし、マネージできる人材を養成することも急務となってきています。このような医療に関わる新しい形の人材育成を大学院として行うためには、これまでの医学研究科の体制では対処しきれないため、2009年度に「医療科学系専攻」を立ち上げました。すなわち、医学研究科は、これまでの5専攻をまとめた「医学研究系専攻」と、新たな「医療科学系専攻」の2専攻体制に新しく生まれ変わり、2009年4月入学者より、2専攻体制の募集と選抜を開始しました。

国際的な学びの場

医学研究科博士課程の必修科目である、主科目講義(医学特別講義、医科学方法論、生命倫理学)は、その多くが英語で実施されており、日本人学生と留学生の区別を設けずに、国際的かつ実践的な学びの場を提供しています。医学研究科に在籍する留学生の人数は年々増加しており、2016年に18人だった人数が、2019 年には35 人、2021 年4 月には53 人の留学生が互いに切磋琢磨しあいながら学んでいます。各研究室に外国人研究者が在籍しており、海外医学部からの短期留学生も多く訪れています。
また、大学院生には海外学会への参加や留学を奨励し、国際的に活躍できる研究者の育成に注力しています。慶應医学会の例会や各研究室の主催するセミナーでは、第一線で活躍する国内外の研究者から最先端の研究内容を学ぶことができ、国際的な研究の連携が推進されてきました。
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で海外渡航等は制限がありましたが、国際的な共同研究は活発に継続されています。

国際プログラム

医学研究科博士課程では、2011年より、カロリンスカ医科大学、北京大学医学部、キングス・カレッジ・ロンドン(2014年より参加)と合同サマースクール(Joint Summer School)を開講しています。毎年、参加校のいずれかを会場に、レクチャーコースとラボワークを実施し、参加者はプログラムに全日程参加することで所属校の単位を取得できる単位互換プログラムです。将来的にはダブルディグリープログラムへの発展を目指しています。

国際的研究活動へのサポート

慶應義塾医学振興基金は、1996 年より毎年、医学・生命科学の発展に寄与する顕著かつ創造的な研究業績をあげた国内外の著名な研究者を顕彰し、慶應医学賞を授与しています。過去には、本賞受賞者からノーベル賞受賞者を8 名輩出しており、国内の大学において他に類を見ない顕彰制度です。慶應義塾大学信濃町キャンパスで授賞式、受賞記念講演会等を開催しています。
また、同基金では、若手研究者を対象とした研究助成金制度( 最高採択額300 万円/ 件、総額1000 万円)や、学生を対象とした短期留学補助制度、国際学会外国出張費用の補助を提供しています。多くの若手研究者や学生が、国や民間からの助成・補助に加えてこれらの制度を活用して、充実した研究活動を行なっています。