本研究は循環器内科の田村雄一(83回生・現国際医療福祉大学医学部准教授)がフランスパリ大学国立肺高血圧センターに留学中の成果をまとめたものである。
厚労省指定難病である肺動脈性肺高血圧症では全国に数千人の患者がいる疾患であり、肺動脈末梢血管における血管内皮細胞障害と平滑筋の増殖を主体にしたリモデリングによって引き起こされるが、その詳細な機序は明らかになっていない。肺動脈性肺高血圧症患者の血清中でIL-6をはじめとした炎症性サイトカインが上昇し、予後不良予後不良因子となることは知られていたが、肺血管自体にどのように作用するかは明らかでなかった。田村君は肺動脈性肺高血圧症患者において細胞膜結合型IL-6受容体が肺動脈血管平滑筋細胞に多くに発現し、IL-6シグナルが血管平滑筋細胞に抗アポトーシス耐性をもたらすことで肺動脈のリモデリングに寄与することを初めて明らかにした。また IL-6受容体をブロックすることで肺高血圧症が改善することを ラット肺高血圧症モデルや平滑筋特異的IL-6受容体ノックアウトマウスモデルなどを用いて丁寧に示すことで、今後治験予定のIL-6受容体抗体による肺高血圧症治療に科学的根拠を与えた質の高いtransnational researchの報告である。
(現国際医療福祉大学医学部准教授 田村雄一 83回)