2017/04/11
信濃町地区研究者各位
信濃町キャンパス 学術研究支援課
4月7日付で平成29年度 日本医療研究開発機構(AMED)「感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)」について新規課題が公募されました。
ご応募を検討されている研究者におかれましては下記照会先までご一報くださいますようお願いいたします。
(1) 応募意思の申し出締切:【平成29年4月25日(火)】
(2) 応募書類一式提出締切:【平成29年4月28日(金)】
【注意点】
・ 本学で応募が可能な方は、本学と雇用関係のある”常勤”の研究者となります。
・ 機関を対象としての公募であり、申請は代表機関の長が行うことになります。
・ 提案書の提出方法:【e-Rad】
―公募概要―
感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)
http://www.amed.go.jp/koubo/010620170310.html
AMED 戦略推進部 感染症研究課
【受付期間】平成29年4月7日~平成29年5月9日(火)正午 (厳守)
【研究開発費の規模】1課題あたり1500万円程度/年(間接経費を含む)
【研究予定期間】最長3年(平成29年度~平成31年度)
<公募研究開発課題名>
1. ヒトに対し極めて高い致死性を示すウイルス感染症に関する研究
(1) アレナウイルス、フィロウイルス、ブニヤウイルス科等に属するウイルスの研究
【採択課題予定数】1~3課題程度
2. 病原体-宿主因子の相互作用及び感染制御機構等に関する研究
(1) 感染病態の理解に基づく新規治療コンセプトの確立のための探索研究
(2) 潜伏及び持続感染の成立、維持と再活性化の分子機構の研究
(3) 経胎盤感染や血液脳関門の破綻による感染の分子機構の研究
【採択課題予定数】(1)~(3)についてそれぞれ1~6課題程度(合計10~20課題程度)
3. ワンヘルスの概念に基づいた病原体の生態に関する研究
(1) 生態系における病原体の環境適応機構の研究
(2) 病原体の宿主域を決める分子機構の研究
(3) 薬剤耐性病原体に対する新規治療法に資する研究
【採択課題予定数】(1)~(3)についてそれぞれ1~3課題程度(合計5~10課題程度)
<各課題の概要>
1.ヒトに対し極めて高い致死性を示すウイルス感染症に関する研究
【背景】
2014年に西アフリカで感染が拡大したエボラウイルス感染症は、現在沈静化しているものの、再流行の可能性は否定できない。その他にも、極めて高い致死性を示すラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルク病等のウイルス感染症も世界各地で発生事例の報告があり、今後我が国への侵入リスクが高まることが予想される。しかし、それらウイルスが特に高い伝染性、病原性を示す理由は未解明であり、ウイルス感染の予防と治療に最適な標的を明らかにすることが必要である。一方、これらウイルス感染症に係る研究者層が十分ではなく、国内研究者層の裾野を広げることが課題となっている。
1-(1) アレナウイルス、フィロウイルス、ブニヤウイルス科等に属するウイルスの研究
【趣旨及び研究の例】
高い伝染性、病原性を示すウイルスについて、BSL3(P3)以下の封じ込め施設で扱える改変ウイルスや病原性の低い類縁ウイルスを使って、感染受容体を介した細胞内侵入から、ゲノム複製、粒子形成に至るウイルス増殖過程を詳細に解析し、病原性を支える分子機構を推定し、ウイルス感染の予防と治療に最適な標的を明らかにする研究などを推進する。
2.病原体−宿主因子の相互作用及び感染制御機構等に関する研究
≪背景≫
ヒトに侵入し、定着・増殖しようとするウイルス、細菌、寄生虫などの病原体とそれを防ぐバリア機構や自然免疫、獲得免疫のバランスによって発症の有無や重篤度、予後が決まる。病原体の増殖だけでなく、過度の免疫反応が重症化の原因となる場合もある。最前線の臨床現場で観察される課題等を糸口として、異分野の研究者が連携して新たな研究方法を展開し、病原体と宿主の相互作用に関する理解を進めていくことが必要となっている。
2-(1) 感染病態の理解に基づく新規治療コンセプトの確立のための探索研究
【趣旨及び研究の例】
感染者体内での病原体の質的及び量的な動態や免疫応答と病態の推移を詳細に調べ、病態を分子レベルで理解することで、新たな治療法の開発が期待できる。体内での病原体変異によって生じる準種と病態の関係に関する研究、口腔内・腸管内における微生物間及び宿主との相互作用の研究、オルガノイドなどを用いたin vitroでの病原体増殖系の構築と病態の再現に関する研究、新規動物モデルの開発、ヒト化マウスを用いた免疫応答の解析など、これまでに無い発想、技術による感染症病態の解析研究、及びこれらの研究から得られたデータから発症過程を推定する数理生物学的解析手法の開発などを推進する。
2-(2) 潜伏及び持続感染の成立、維持と再活性化の分子機構の研究
【趣旨及び研究の例】
ヒトに感染したのち潜伏し、免疫能の低下時に増殖するとされる病原体がある。不顕性感染者がヒト集団内で病原体を維持し、新規流行時の感染源になると考えられる場合もある。しかし、潜伏、持続感染の詳細な機構は解明されていない。病原体の潜伏状態の成立・維持と再活性化の分子機構の研究、持続感染病原体が免疫系から逃避する分子機構の研究、組織特異性を逸脱して感染、増殖する病原体と宿主因子の関連についての研究、流行を繰り返す病原体の非流行時の社会における存在様式を明らかにする研究、などを推進する。生物統計学解析で、新たな仮説を立てる研究も対象とする。
2-(3) 経胎盤感染や血液脳関門の破綻による感染の分子機構の研究
【趣旨及び研究の例】
胎盤や血液脳関門は病原体の胎児や脳内への侵入を防ぐ機能を担う。しかし、様々な病原体が母親から胎児に感染し、胎児の発育に重篤な影響を与えることがある。母体に症状が無く、病原体レベルも低くて感染が検出できない場合でも胎児が感染し、正常な発育が妨げられ、流産・奇形発生に至る場合もある。また、血液脳関門の破綻による病原体の侵入が原因となる脳・神経症状も、その分子機構が不明で、治療法も無い。妊婦と胎児の免疫状況、胎盤を病原体が通過する過程、胎児の発育に対する影響を詳細に解析する研究や、無症候性で母子感染病原体に感染している妊婦の診断法の開発、血液脳関門が破綻する分子機構の解明と予防・治療法の開発などの研究を推進する。
3. ワンヘルスの概念に基づいた病原体の生態に関する研究
≪背景≫
感染症はヒトや動物とウイルス、細菌、寄生虫などの病原体、媒介昆虫、これらに共生する様々な微生物の複雑な相互作用を基盤にしている。人、家畜、野生動物と環境中の微生物を一体としてとらえる「ワンヘルス(One Health)」概念の重要性が国際的に認識されつつある。新たに発生する感染症の多くは人獣共通感染症であり、また薬剤耐性病原体の発生や漫延ヘの対応には、この概念に基づいて地域レベル、国レベル、さらには国際的な協力が求められている。我が国においても平成28年4月に関係閣僚会議において「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定され、国内対策の強化が打ち出されている。
3-(1) 生態系における病原体の環境適応機構の研究
【趣旨及び研究の例】
病原体はヒトや動物に感染、増殖し、変異等によって免疫系からの逃避、増殖能の強化、潜伏能の獲得などの進化を継続し、自然環境中で維持されている。しかしこれらの仕組みは明らかになっていない。患者や環境から分離される病原体情報を取得し、新たな数理生物学的解析手法を開発して生態系における病原体の環境適応機構を明らかにする研究、病原体の進化を予測し感染予防へ応用する研究などを推進する。
3-(2) 病原体の宿主域を決める分子機構の研究
【趣旨及び研究の例】
特定の動物種に感染し、いわば共存関係にある微生物が、本来の自然宿主域を超えてヒトに感染、増殖すると高い病原性を獲得することがある。病原体の宿主域は、宿主細胞の感染受容体や定着組織の構造と機能、細胞内環境等で決まると考えられる。動物を宿主とする病原体がヒトに感染、増殖する能力を獲得する機構を究明し、リスクを評価し、変異による宿主域の拡大を監視することは重要である。ヒトへ感染し、強い病原性を示すことが危惧される動物感染症の宿主域要因に関する研究などを推進する。
3-(3) 薬剤耐性病原体に対する新規治療法に資する研究
【趣旨及び研究の例】
薬剤耐性病原体の蔓延は感染症の治療を困難にすることから対策が急がれている。薬剤耐性の伝播経路を断ち切る方法の開発、ファージの活用、クオラムセンシング機構や細胞外分泌性膜粒子などの細菌細胞間の情報伝達系への介入、バイオフィルムの形成阻害、常在細菌叢の強化など抗菌薬を使わない新しい発想・技術による薬剤耐性病原体の制御方法の開発を推進する。
担当(照会先):信濃町キャンパス 学術研究支援課 AMED担当
メール:amed-shinano@adst.keio.ac.jp