OISTは、研究者にとっての「ディズニーランド」です。
潤沢な予算、綺麗な施設、研究に理解があるリーダー陣、完全英語の環境、充実した教育リソース、美しい沖縄の海…。これらを目掛けて、世界的な研究者がOISTに集い、その科学者達に惹かれてさらに優秀な学生が集まります。今のOISTは、間違いなくこの正の循環を作り出していて、凄まじい速度で研究機関として成長しています。私は研究者になるかどうかわかりませんが、OISTでなら、研究者としてやってみたいとさえ思いました。そう思わせる、素敵な環境でした。
OISTは2011年に設立され、日本ないし世界随一の新進研究・教育機関としての地位を築いてきています。2019年、質の高い論文数で世界の研究機関をランキング付けするNature Indexの正規化ランキングにおいて、世界9位と評価されました。
OISTの特徴を概略すると以下の通りです。
・ 5年一貫性、博士課程のみの大学院大学。つまり学部生は存在しない。
・ 学生および研究者の半数以上が外国人であり、学内の公用語が英語になる。
・ 文科省ではなく内閣府の所管で、収入の多くを国からの運営費補助金が占め、潤沢な運営費・施設整備費が確保されている。
・ 理事会メンバーに世界的な研究者が多く、設計段階から研究者の意見が取り入れられたため、施設の設計や研究体制が学際的なコラボレーションを生み出すのに最適化されている。
なかでも、私が思うOISTの良かったところとして、学際的な学びを豊富にするための工夫が色々なところに施されていたことが挙げられます。
例えば、毎週土曜日午後にtea timeがあり、無料のおやつとコーヒーを目掛けてたくさんの研究者がカフェテリアに集まります。そこで自然と会話が生まれ、面白い話が聴けます。ホヤ(海鞘)の研究をする台湾人、機械学習の一種である強化学習を学ぶために東大からOISTに入った日本人、学部時代から論文を連発していた気鋭の分子生物学者など、医学部のレールに乗っていると一生会えないような、面白い人たちと会話することができ、知的興奮が止まりませんでした。また、研究棟にはたくさんのラウンジが設けられていて、コーヒーマシーンの前で待っている間に会話が生まれます。別の研究室の知り合いのインターン生達と認知についての議論が白熱し、気づいたら立ったまま1時間話し込むこともありました。また、黒板も置いてあり、たまたまそこで書きながら思考を整理していた知り合いが位相学(高等数学の一つ)ついてプチ講義をしてくれたりしました。
こういった突発的な議論が生まれる工夫以外に、イベントをほぼ毎日というかなりの高頻度で開催していることも特徴として挙げられます。その一つのイベントでは、東京大学准教授で、Brain Machine Interfaceの研究で有名な渡辺先生がいらっしゃり、講演の後ディナーに同席させていただくなど、偶然にもOISTにきたからこそ生まれた貴重な時間を過ごさせていただきました。