プロフェッショナリズム教育とは

素人にとって、内容や質が容易に理解できない仕事に従事する専門職には、一定の資格・免許などにより特別な地位と独占性が認められ、それゆえ職業倫理の確立と尊重が求められます。医師はまさに、公益性、道徳性、専門性が強く求められる専門職(プロフェッション)です。医師のプロフェッショナリズムの定義は、様々なものがありますが、ArnorldとSternらは、臨床能力・コミュニケーションスキル・倫理的・法律的理解の土台の上に立つ、卓越性・人間性・説明責任・利他主義の4つの柱でプロフェッショナリズムを支えていくと「定義」しています。

医療技術、医療知識が加速度的に増加している現在こそ、医学教育においては「プロフェッショナリズム教育」が重視されています。

慶應義塾大学医学部における
プロフェッショナリズム教育

現在の医学教育におけるプロフェッショナリズム教育の重要性を考え、慶應義塾大学医学部では、2014年より新しいカリキュラムを開始し、1学年から6学年まで6年間一貫して、プロフェッショナリズム教育を行うこととしました。

メディカル・プロフェッショナリズムI、行動科学I(1学年)

倫理学、法学、心理学の基礎を学ぶことを通して人間に対する深い理解を目指します。

メディカル・プロフェッショナリズムII(2学年)

医療制度・医療政策の基礎と、それらを理解するうえで必要な経営学・経済学の基本を理解します。

メディカル・プロフェッショナリズムIII(3学年)

研究の倫理的基礎を修得します。

メディカル・プロフェッショナリズムIV(4学年)

臨床研究における倫理、医療コミュニケーション、医師としてのあり方について学びます。

メディカル・プロフェッショナリズムV(5学年)

医療事故が社会問題化した背景、医師としての心構え、医師の社会的役割、医師に求められるパブリックヘルス・マインド、終末期医療における法的課題と医師のとるべき行動、というテーマについて、グループワークを通じて学んでいきます。

メディカル・プロフェッショナリズムVI(6学年)

終末期医療、脳死判定・臓器移植、生殖補助医療の選択肢、医療事故・患者トラブル・医療訴訟の実際、遺伝病と着床前診断など、医療現場における生命倫理の適用についてグループワークを通じて学んでいきます。

メディカル・プロフェッショナリズムという科目以外にも、当然、多くの科目でプロフェッショナリズム教育は継続的に繰り返し行われています。たとえば、解剖学での解剖実習では、実習を通して、医学的なことを学ぶだけでなく、医学研究者、医師になっていくものとしてのたくさんのことを学びます。医療系三学部合同教育は、他職種との連携、チームワークを学びます。また、実際に患者さんと接しながら行う臨床実習は、医師としてのプロフェッショナリズムを学ぶ重要な機会となっています。