C O V I D - 1 9 のパンデミックの初期に、COVID-19の潜伏期間に手術を行うことにより術後呼吸器合併症を発症し重症化するリスクが報告され、周術期の術前PCRスクリーニングが推奨された。今回、我々は術前PCRスクリーニングの費用対効果に関する研究を実施した。費用効果分析では、1単位効果量あたりの増分費用を計算する。術前PCRスクリーニングでは、1QALYあたりの増分費用は291,123,368円、1死亡回避あたりの増分費用は74,469,236円であり、我が国でよく使われる費用対効果が優れるという目安(500万円/QALY)を大きく超え、費用対効果が悪い結果であった。感度分析においては、検査陽性率が0.739%を超える場合には費用対効果が優れていたが、術後呼吸器合併症発症率が22%を下回る場合には、検査陽性率に関わらず費用対効果は悪かった。本研究結果が発表された後、米国感染症学会のガイドラインは、術前の無症候PCRスクリーニングを推奨しないよう変更された。我が国において医療の効率化は喫緊の課題であり、引き続きこのような、社会に貢献できる費用対効果に関する研究を継続したいと考えている。 (感染症学 専任講師 宇野俊介 87回)