なぜ、ヒトは
研究をするのでしょうか?

医学研究科委員長 金井隆典

好奇心
研究は、間違いなく“好奇心”から始まります。発明王エジソンが子供頃、「なぜ、遠くの線路は近くの線路より幅が短いの?」という質問を母親にしたそうです。エジソンが遠近法を発見したわけではないのですが、もし、エジソンが最初の質問者であったら、彼が遠近法を発見したことでしょう。研究では、こうした素朴な疑問、好奇心を持つことが研究者の始まりであり、研究者にはなくてはならない資質とも思います。それも、好奇心の原動力となる奇抜な疑問であればあるほど、好奇心は湧いてきます。「彼(彼女)はユニーク(変)だね」は最上級の褒め言葉です。

あきらめない
破傷風菌の純培養法の確立、抗血清療法の確立という偉大な発見を成し遂げた、北里柴三郎初代医学部長が第1回ノーベル医学生理学賞にノミネートされ、今の時代なら、当然、受賞していたことでしょう。しかし、惜しくも選に漏れたことは有名です。そして、ドイツからの帰国後、伝染病研究所、北里研究所、慶應義塾大学医学部で、世界最高レベルの医学研究を展開し、そこから、志賀潔博士、秦佐八郎博士などの著名な医学者が誕生しました。いずれの先人達も、「できるはずがない」、「見つかるわけない」、「存在するわけない」という常識にとらわれず果敢に挑戦し、常識を覆すことに成功しています。 医学研究には、まず、好奇心、疑問から始まりますが、“あきらめない”ことも、研究者の資質として重要です。

慶應義塾大学医学研究科では、医学医療に関する研究テーマを世界レベルで展開している多くの研究室が揃っています。最初は、「研究には興味はあるが、自分にできるかな?」と不安もあるかもしれません。しかし、最初は皆同じで、多少楽観的に始めてみてほしいです。是非、本学の医学研究科(大学院)の学生さんには、「できるはずがない」、「見つかるわけない」、「存在するわけない」とまわりから思われているような研究テーマを見つけ、好奇心旺盛に挑戦してみてほしいです。慶應義塾大学医学研究科の環境は皆さんの期待に応えることができると自負しています。

慶應義塾大学医学研究科では、医学研究に挑戦してみたいという研究者の卵の皆さんを歓迎します。

医学研究科委員長
金井 隆典
Takanori Kanai

慶應義塾大学医学部長、医学研究科委員長、内科学教室(消化器)教授。専門は内科学、消化器免疫学、臓器相関学。日本消化器免疫学会理事長。日本消化器病学会理事。