Nature.
2023, volume 615 ; 127–133 (2023)doi:10.1038
Sakurai M, Ishitsuka K, Ito R, Wilkinson AC, Kimura T, Mizutani E, Nishikii H, Sudo K, Becker HJ, Takemoto H, Sano T, Kataoka K, Takahashi S, Nakamura Y, Kent DG, Iwama A, Chiba S, Okamoto S, Nakauchi H, Yam
造血幹細胞は、赤血球・白血球・血小板といった血液細胞へ分化する能力を持ち、造血幹細胞移植では、移植後の造血および免疫の再構築において重要な役割を担います。しかし、造血幹細胞は非常に数が少なく、特に臍帯血移植においては、生体外増幅技術の確立が求められています。これまで、生体外での造血幹細胞の維持には、血清アルブミンとサイトカインが不可欠とされてきましたが、その増幅作用は限定的でした。私たちは今回、アルブミンとサイトカインを、それぞれ高分子ポリマーと特定の化合物に置き換えた培地を用いて、ヒト造血幹細胞の生体外長期増幅を可能とする新規培養技術を開発しました。これにより、臍帯血に含まれるヒト造血幹細胞を長期かつ選択的に増幅することができるようになりました。今後、この培養技術を基礎研究ツールとして提供するとともに、より安全な造血幹細胞移植の実現とドナー不足の解消に向けた臨床応用を目指します。
(血液内科 櫻井政寿 86回)
Lancet Rheumatology.
2023 Apr;5(4):e215-e224.
Hiroya Tamai, Kei Ikeda, Toshiaki Miyamoto, Hiroaki Taguchi, Chang-Fu Kuo, Kichul Shin, Shintaro Hirata, Yutaka Okano, Shinji Sato, Hidekata Yasuoka, Masataka Kuwana, Tomonori Ishii, Hideto Kameda, Toshihisa Kojima, Takehiro Taninaga, Masahiko Mori, Hideaki Miyagishi, Yasunori Sato, Wen-Chan Tsai, Tsutomu Takeuchi, Yuko Kaneko, and MIRACLE study collaborators.
関節リウマチの治療は、まずメトトレキサート(MTX)で治療を開始し、効果不十分な場合に、TNF阻害薬などを追加することが全世界で推奨されている。TNF阻害薬はMTXを継続して併用すると有効性が高まることは知られてるが、必要なMTX用量に関しては明らかとなっておらず、一般的に同量の継続が行われていた。
MIRACLE試験は本学が中心となり日本、韓国、台湾で行ったエーザイ株式会社との共同研究で、300名の早期関節リウマチ患者が試験に参加した。まずMTX単剤内服治療を24週間行い、治療目標である寛解を達成しない場合にアダリムマブを追加した。この際、併用するMTXを同量継続する群と減量する群に割付けた。24週後の寛解達成率は同量継続群で38%, 減量群で44%と減量群で効果は劣らず、有害事象は同量継続群で35%、減量群で20%と減量群で少ない傾向にあった。本研究により、TNF阻害薬を開始する際、より安全な治療を提供できると期待される。
(リウマチ・膠原病内科 玉井博也 91回)
Inflamm Regen.
2023 Apr 3;43(1):23. doi: 10.1186/s41232-023-00273-7
Emi Qian, Masahiro Uemura, Hiroya Kobayashi, Shiho Nakamura, Fumiko Ozawa, Sho Yoshimatsu, Mitsuru Ishikawa, Osamu Onodera, Satoru Morimoto, Hideyuki Oka
脳小動脈硬化により認知症や運動症状を来すBinswanger病等の脳小血管病の原因として、炎症や異常タンパク質の蓄積が挙げられるが、詳細な発症機序は不明であり、遺伝性脳小血管病が病態解明の糸口として着目されている。常染色体潜性遺伝性脳小血管病のCARASILの原因遺伝子であるHTRA1は、近年、ヘテロ接合性変異であっても脳小血管病を発症することがわかってきた。本研究では医学部6年生の銭映美さんと、医学部生理学教室の森本悟・特任講師と岡野栄之・教授の研究グループが、新潟大学との共同でHTRA1のヘテロ接合性変異を持つ脳小血管病患者から世界で初めてiPS細胞を樹立し、健常者由来iPS細胞と比べてHTRA1の発現低下が見られることを見出した。さらに、TGF-βシグナルの活性化に伴い発現量が増加するNOGGINの発現増加を認め、HTRA1変異によりTGF-βシグナルの脱抑制が生じ、血管病変が引き起こされる機序が示唆された。当該iPS細胞は、病変細胞に分化させることで、さらなる病態解析研究への応用が期待される。
(生理学教室 森本悟 89相当)
Circulation.
2023;147(3):223-238.
Tani H, Sadahiro T, Yamada Y, Isomi M, Yamakawa H, Fujita R, Abe Y, Akiyama T, Nakano K, Kuze Y, Seki M, Suzuki Y, Fujisawa M, Sakata-Yanagimoto M, Chiba S, Fukuda K, Ieda M.