Blood,
2022 Feb 17;139(7):967-982. doi: 10.1182/blood.2021013568.
Kogure Y, Kameda T, Koya J, Yoshimitsu M, Nosaka K, Yasunaga JI, Imaizumi Y, Watanabe M, Saito Y, Ito Y, McClure MB, Tabata M, Shingaki S, Yoshifuji K, Chiba K, Okada A, Kakiuchi N, Nannya Y, Kamiunten A, Tahira Y, Akizuki K, Sekine M, Shide K, Hidaka T, Kubuki Y, Kitanaka A, Hidaka M, Nakano N, Utsunomiya A, Sica RA, Acuna-Villaorduna A, Janakiram M, Shah U, Ramos JC, Shibata T, Takeuchi K, Takaori-Kondo A, Miyazaki Y, Matsuoka M, Ishitsuka K, Shiraishi Y, Miyano S, Ogawa S, Ye BH, Shimoda K, Kataoka K.
近年、がん患者集団の国際的なゲノム解析が実施され、がんの発生・進展の基盤となるドライバー異常の全体像が解明されつつありますが、本邦に多い成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)のような希少がんの検討は不十分でした。私達は国内外から合計150例のATL検体を収集し、検出力を高めた高深度全ゲノム解析を行いました。タンパクコード領域および非コード領域における変異・構造異常・コピー数異常からなる複数の種類の異常を統合的に解析することで、CIC遺伝子やREL遺伝子といった11個の新規遺伝子を含む56個のドライバー遺伝子を同定しました。さらにマウスモデルを用いてCIC-L(長いアイソフォーム)特異的な異常によってATLの発生起源とされるFoxp3陽性T細胞が増加することを示しました。その他にも様々な角度からATLのゲノム異常の解析を実施した本研究は、ATLの新たな診断法や治療薬開発の基盤となることが期待されます。
(血液内科学教室 片岡圭亮 84相当)
Nature Chemical Biology.
2022 Mar 10. doi: 10.1038/s41589-022-00984-x.
Toshimitsu K, Takano A, Fujii M, Togasaki K, Matano M, Takahashi S, Kanai T, Sato T.
シークエンス技術の向上により、遺伝子のバリアントに基づき治療を進める精密医療が現実のものとなった。医療は今後どのような進化を果たすのであろうか?本研究では、大腸がん患者から樹立した20ラインのオルガノイドが体外でどのような薬剤感受性を示すかを検証した。現在の臨床エビデンスの通り、KRAS変異をもつ大腸がんオルガノイドはEGFR抗体医薬への抵抗性を示した。しかし、ゲノム医療の予測には従わない大腸がんオルガノイドも存在し、エピゲノム変化などの別のパラメータの援用の必要性が示唆された。実際、抗がん剤の1つであるパクリタキセルの感受性は特定の遺伝子のエピゲノムのサイレンシングによって規定されることを見出した。さらに、本研究では患者由来オルガノイドの増幅効率、薬剤感受性解析スループット性、解析時間短縮の飛躍的な向上を達成した。これらの研究成果から、患者から採取した腫瘍をそのまま培養し、薬剤感受性を精確に予測するオルガノイド医学の萌芽が期待される。
(坂口光洋記念講座オルガノイド医学教室 佐藤俊朗 76回)
Allergy.
2022 Feb 10. doi: 10.1111/all.15249.
Takeya Adachi, Yasushi Ogawa, Tamami Fukushi, Kei Ito, Amane Koizumi, Masashi Shirabe, Masako Toriya, Jun Hirako, Takenori Inomata, Katsunori Masaki, Ryohei Sasano, Sakura Sato, Keigo Kainuma, Masaki Futamura, Keiko Kan-o, Yosuke Kurashima, Saeko Nakajima, Masafumi Sakashita, Hideaki Morita, Aikichi Iwamoto, Sankei Nishima, Mayumi Tamari, Hajime Iizuka
本研究ではAMED、NIH、MRCの免疫アレルギー事業の研究インパクト解析を実施し、日本の成果論文は量や「研究の厚み – 長期的な影響力」がある一方で、オープンアクセス率が低いこと等が明らかとなりました。これまで研究助成評価では、インパクト・ファクター等の雑誌評価指数が誤用されてきましたが、本研究成果をもとに確立された多様な視点による解析基盤によって、効果的な国際共同研究や長期的な研究戦略の策定への貢献が期待されます。
(皮膚科学教室 足立剛也 86回)