Nature Biotechnology
35, 38–47 (2017) doi:10.1038/nbt.3710
Kiwamu Takemoto, Hiroko Iwanari, Hirobumi Tada, Kumiko Suyama, Akane Sano, Takeharu Nagai, Takao Hamakubo & Takuya Takahashi
横浜市立大学大学院医学研究科 生理学 高橋琢哉教授(74回)と竹本 研助教(78生相当)の研究グループは、トラウマ記憶を光操作により消去する新規技術の開発に成功しました。事故や災害における恐怖体験や対人関係のトラブルといった社会的関係のストレスなど、その嫌な記憶は強く形成されてしまうとトラウマとなり、対人恐怖症等の社会性障害を引き起こします。同グループは、以前「ラットが特定の場所に入った時に電気ショックを与えるとその場所に近づかなくなるが、その恐怖記憶が形成される際にグルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体が海馬のCA3領域からCA1領域にかけて形成されるシナプスに移行し、これが恐怖記憶形成に必要である」ということを発見しました。今回の研究では、トラウマ記憶形成の過程でシナプスに移行したAMPA受容体を、光増感物質であるエオシンでラベルした抗AMPA受容体抗体を介して光操作により破壊することにより、トラウマ記憶を消去する新規技術を開発することに成功しました(図)。本研究は心の傷をコントロールする新規治療法に向けたさらなる糸口になると期待されます。
(横浜市立大学大学院医学研究科生理学教授 高橋琢哉 74回、助教 竹本 研 78相当)
Neuron
92 (3): 582-590, 2016.
Okano H, Sasaki E, Yamamori T, Iriki A, Shimogori T, Yamaguchi Y, Kasai K and Miyawaki A.
Nat Rev Neurosci
17, 733-734, 2016.
Okano H, Yamamori T:
ヒトの高次脳機能がどのようなメカニズムによって発揮されるのかは未だによく解っていませんし、認知症や多くの精神疾患には決定的な治療法がありません。これらの問題を根本的に解決するために、ヒトの脳の構造的・機能的な神経回路の全容解明への期待感が国際的にも高まっています。この趨勢を受けて、2013年に米国ではBrain Initiative, 欧州ではHuman Brain Projectといった国際的に革新的な研究技術の応用による網羅的な脳神経回路研究の立ち上げが行われました。ここで日本の対応が遅れれば、国際的な競争力が失われる可能性が極めて高苦なるという危機感が高まり、世界で3番目のプロジェクトとして、我が国では「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」 (Brain/MINDS:革新脳)が2014年に発足しました。革新脳では、ヒトの脳・神経ネットワークの理解とそれに基づく疾患克服に向けて、霊長類の脳を対象とした研究が必須であるという認識のもと、我が国の強みを活かした研究戦略として、遺伝子改変が可能な霊長類マーモセットを活用した独創性の高い研究を展開しており、国際的にも高い評価を受けております。慶應義塾大学医学部の卒業生である岡野栄之君 (医学部生理学教室・教授・62 回)と宮脇敦史君(理化学研究所脳科学総合研究センター・副センター長・66 回)の二人が、この革新脳プロジェクトのプロジェクトリーダーを務めています。このNEURONとNature Review Neuroscienceに発表した二つの論文では、Brain/MINDSのプロジェクト概要と脳科学研究の国際連携と将来展望について解りやすく解説しております。
(生理学教室教授 岡野栄之 生62回)
Nature Cell Biology
18,1031–1042 (2016) doi:10.1038/ncb3411
Kazuki Kodo, Sang-Ging Ong, Fereshteh Jahanbani, Vittavat Termglinchan, Keiichi Hirono, Kolsoum InanlooRahatloo, Antje D. Ebert, Praveen Shukla, Oscar J. Abilez, Jared M. Churko, Ioannis Karakikes, Gwanghyun Jung, Fukiko Ichida, Sean M. Wu, Michael P. Snyder, Daniel Bernstein and Joseph C. Wu
Ann Rheum Dis
doi:10.1136/annrheumdis-2015-208426
Yuko Kaneko, Tatsuya Atsumi, Yoshiya Tanaka, Masayuki Inoo,Hitomi Kobayashi-Haraoka, Koichi Amano, Masayuki Miyata, Yohko Murakawa, Hidekata Yasuoka, Shintaro Hirata, Hayato Nagasawa, Eiichi Tanaka, Nobuyuki Miyasaka, Hisashi Yamanaka, Kazuhiko Yamamoto,Tsutomu Takeuchi
JOURNAL OF ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
NOV 2016, 138 (5):1253-1264;10.1016
Morita Hideaki, Moro Kazuyo, Koyasu Shigeo
TRENDS IN IMMUNOLOGY
37 (11):803-811; 10.1016/j.it.2016.08.012 NOV 2016
Kanamori Mitsuhiro, Nakatsukasa Hiroko, Okada Masahiro, Lu Qianjin, Yoshimura Akihiko