筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、数年のうちに呼吸不全に陥る神経変性難病である。2006年にALS疾患概念に変革を与える画期的な原因分子であるRNA結合蛋白TDP-43が同定された。その後、ALSの原因遺伝子が次々に同定され、その分子メカニズムが劇的に明らかとなってきた。 これまでALSは運動神経が選択に障害される疾患と考えられていたが、若年性認知症である前頭側頭型認知症や筋・骨疾患とも併発する多彩な表現型を持つ疾患スペクトルであることが分かってきた。同定されたALS原因遺伝子の生理機能は、RNA代謝と蛋白品質管理機構といった細胞内機構に集約され、ALSの分子病態がこの二つの分子機構の破たんにあることが明らかとなった。 本レビューでは、著者自身の基礎研究を踏まえ上記について概説するとともに、神経変性疾患の克服にむけた病態修飾薬開発の可能性を説いている。
(神経内科 伊東大介 71回)