Nature Cancer.
2025 May;6(5):874-891. doi: 10.1038/s43018-025-00945-y.
Fukushima T, Togasaki K, Hamamoto J, Emoto K, Ebisudani T, Mitsuishi A,
Sugihara K, Shinozaki T, Okada M, Saito A, Takaoka H, Ito F, Shigematsu L, Ohta
Y, Takahashi S, Matano M, Kurebayashi Y, Ohgino K, Sato T, Kawada I, Asakura K,
Hishida T, Asamura H, Ikemura S, Terai H, Soejima K, Oda M, Fujii M, Fukunaga K,
Yasuda H, Sato T.
Nature Communications.
2025 May 11;16(1):4369. doi: 10.1038/s41467-025-59623-3.
Shinozaki T, Togasaki K, Hamamoto J, Mitsuishi A, Fukushima T, Sugihara K,
Ebisudani T, Okada M, Saito A, Shigematsu L, Takaoka H, Ito F, Ohgino K, Ishioka
K, Watanabe K, Hishima T, Kurebayashi Y, Emoto K, Terai H, Ikemura S, Kawada I,
Asakura K, Hishida T, Asamura H, Ohta Y, Takahashi S, Oda M, Saito M, Matano M,
Soejima K, Fujii M, Fukunaga K, Yasuda H, Sato T.
患者由来肺癌オルガノイドライブラリーを用いた
肺癌不均一性の分子理解と新規治療標的の同定
肺癌は不均一な疾患で、その中に病理学的、遺伝子学的特徴の異なる多くのサブグループが存在します。呼吸器内科と医化学教室(佐藤俊朗教授)では緊密な共同研究体制を築き、肺癌の不均一性を分子レベルで理解するための患者由来肺癌オルガノイドを用いた研究インフラを構築してきました。今回、このインフラを基盤として、肺癌の新規治療につながる知見をNature Cancer誌、Nature Communications誌に発表しました。一つ目の論文は、小細胞肺癌に関する論文です。小細胞肺癌は極めて予後不良の難治性疾患ですが、我々は、非神経内分泌タイプの小細胞肺癌に有効な治療薬(IGF1R阻害薬)を同定しました。本知見をもとに、小細胞肺癌におけるIGF1R阻害薬を用いた個別化医療への発展が期待できます。二つ目の論文は、EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌に関する論文です。本領域では、EGFRを標的とした分子標的治療薬が治療経過の中で効かなくなる「獲得耐性」が大きな問題となっています。我々は、約3割の症例で認める獲得耐性機序を新たに明らかにするとともに、その耐性化を克服しうる薬剤(CDK4/6阻害薬)を同定しました。これにより耐性獲得後の肺癌に有効な新たな治療戦略を提案しました。二論文ともに、今後の肺癌治療の発展に大きく貢献する可能性を有する論文であり、今後の臨床応用が期待されます。
(呼吸器内科准教授 安田浩之)
Cell.
2025 May 1;188(9):2372-2389.e35.
Taisuke Kondo, François X.P. Bourassa, Sooraj Achar, Justyn DuSold, Pablo F. Céspedes, Makoto Ando, Alka Dwivedi, Josquin Moraly, Christopher Chien, Saliha Majdoul, Adam L. Kenet, Madison Wahlsten, Audun Kvalvaag, Edward Jenkins, Sanghyun P. Kim, Catherine M. Ade, Zhiya Yu, Guillaume Gaud, Marco Davila, Paul Love, James C. Yang, Michael L. Dustin, Grégoire Altan-Bonnet, Paul François, Naomi Taylor
数理モデルを用いた副作用の少ない免疫細胞療法の設計
がん免疫療法の一種であるCAR T細胞療法は血液がんに対して顕著な治療効果を示す一方で、固形がんに対しては正常組織への副作用が大きな課題とされています。今回我々は、CAR T細胞に人工のT細胞受容体(TCR)を組み込むことで、がん細胞と正常細胞の識別精度を飛躍的に高める新技術を開発しました。具体的には、TCRとCARが同時に活性化される状況において、TCRが弱い抗原に反応するとCARの活性が抑制されるという現象を、数理モデルと実験の両面から明らかにしました。この知見に基づいて、正常組織の弱い抗原がCAR T細胞に「ブレーキ」をかけ、強い腫瘍抗原はCAR T細胞に「アクセル」をかける新たな制御機構を設計しました。実際に、このTCR/CAR T細胞は、ヒト化マウスにおいて腫瘍細胞のみを選択的に攻撃し、正常肺組織細胞へのダメージを最小限に抑えることに成功しました。さらに、CAR T細胞の挙動を数理モデルで予測し、実験の効率化と再現性の向上も取り組んでいます。本成果は、TCRによる識別機構をCAR T細胞に統合することで、より安全で効果的ながん免疫療法の開発にも大きく貢献すると期待されます。筆頭著者である近藤泰介は、慶應義塾大学医学部大学院博士課程を経て、米国がん研究所(NCI)留学にて本研究に従事し、現在は先端医科学研究所・がん免疫研究部門(籠谷勇紀教授)に帰任しています。
(先端医科学研究所がん免疫研究部門 近藤泰介)
Circ Res,
Jun. 26, 2025. doi: 10.1161/CIRCRESAHA.124.326030.
Ko S, Liu X, Taniguchi Y, Ichihara G, Komuro J, Yamakawa H, Shirakawa K, Hashimoto H, Katsumata Y, Endo J, Hattori M, Minato N, Sano M, Anzai A†, Ieda M.
Toshikazu D Tanaka, Yasuyuki Shiraishi, Ryeonshi Kang, Takashi Kohno, Satoshi Shoji, Toraaki Okuyama, Yuhei Oi, Ayumi Goda, Ryo Nakamaru, Yuji Nagatomo, Mitsunobu Kitamura, Munehisa Sakamoto, Michiru Nomoto, Atsushi Mizuno, Tomohisa Nagoshi, Shun Kohsaka, Tsutomu Yoshikawa
2025 Jul 1;16(1):5475. doi: 10.1038/s41467-025-60515-9.
Takayuki Morikawa, Shinya Fujita, Yuki Sugiura, Shinpei Tamaki, Miho Haraguchi, Kohei Shiroshita, Shintaro Watanuki, Hiroshi Kobayashi, Hikari Kanai-Sudo, Yoshiko Naito, Noriyo Hayakawa, Tomomi Matsuura, Takako Hishiki, Minoru Matsui, Masato Tsutsui, Makoto Suematsu & Keiyo Takubo