COVID-19の流行により世界の診療提供手段は大きく変わったが、精神科領域においては特に顕著だった。互いの顔を見ながらの会話が診療の大部分を占める診療科としての特性も手伝ってか、精神科診療の大部分が遠隔医療(オンライン診療)に置き換わった地域もある。当然ながらその有効性についての検証は必要だが、包括的な検証は行われていなかった。本メタ解析は、11の精神疾患に関する32の研究に参加した計3,592人のデータを基に、オンライン診療と対面診療の有効性の違いを検討したものである。疾患別解析結果から、うつ病ではオンライン診療が対面診療に比して治療効果に優れていた一方で、摂食障害では対面治療の方が優れていた。しかし、全疾患を統合した際、双方に有意差は認められなかった。また、治療継続に関しては、軽度認知障害ではオンライン診療が優れていたが、物質使用障害では逆の結果だった。この様に、概してオンライン診療は対面診療同等の治療効果を示すものの、疾患によっては差が認められるケースもあり、より適切なアプローチを選択する必要がある。筆者らは、日本の医療制度の中で、オンライン診療の無作為化比較試験も行っており、より適切な医療政策決定のために、良質なエビデンスを提供していきたいと考えている。
(ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 岸本泰士郎 79回)