肥満は腎障害を引き起こすが、従来、主に糸球体障害をきたすと報告されてきた。本研究では特に肥満の超早期における近位尿細管での変化、特に尿細管細胞肥大、腎臓肥大に着目した。私たちの研究室では細胞肥大における低分子GTP結合蛋白RhoAの病的意義について脂肪細胞を用い明らかにしている。本研究ではドミナントネガティブに近位尿細管のRhoAを抑制した肥満マウスでは尿細管肥大、腎臓肥大が起こらないことを見出した。そして肥満では糸球体障害が明らかでない早期の段階でRhoAの下流のmDIA1の過剰な活性化が近位尿細管で起こり、細胞周期の停止と細胞骨格の異常による近位尿細管細胞肥大を引き起こしていることを明らかにした。後期の段階ではmDIA1からやはりRhoAの下流のROCKの過剰な活性化にシフトし、尿細管細胞肥大による炎症性サイトカイン産生を引き起こし腎障害に寄与することを見出した。本研究成果は、肥満関連の腎障害の病態解明に有益な情報を与える可能性が考えられた。
(徳島大学医学部腎臓内科教授 脇野修 69回、日野市立病院内科 井田真規子)