統合失調症は幻覚、妄想等の陽性症状、感情鈍麻や意欲低下等の陰性症状を特徴とする精神疾患である。陽性症状が活発化する急性期は治療に反応しやすく、多くの場合いったん症状は安定化するが、怠薬等を理由に再発を繰り返すと陰性症状や認知機能障害が強くなり社会機能が低下する。よって維持期の治療が大切である。治療薬である抗精神病薬は今までに80以上開発されており、副作用の軽減を主眼に開発された第二世代抗精神病薬は約30ある。これらは新世代の薬剤として一括りに論じられることもあるが、その作用や副作用に違いがあることが示されており情報の整理が求められていた。
本論文は統合失調症の維持期治療における代表的な13の第二世代抗精神病薬同士の無作為化比較試験のメタ解析である。薬剤継続率や再発率など15のアウトカムについて検証し、解析には59試験、46, 000人弱のデータが組み込まれた。結果の詳細は省くが、効果および副作用のプロファイルは薬剤によって大きく異なっていた。改めて、個々の患者の状態に適した薬剤選択が必要であることが示されたといえる。チームでは、本研究のために10年以上に渡ってデータを抽出・蓄積し、解析を行ってきた。本論文は膨大な情報を多忙な臨床医にわかりやすく届けることを目的としており、世界中の精神科医に利用してもらえれば幸いである。
(精神・神経科学教室 岸本泰士郎 79回)