診断のつかない多数の患者さんの遺伝子解析を進めるうちに、小﨑教授の研究グループはPDGFRB・CDC42・CNOT2・CDK19・CTR9・CRMP2・DHX9などの遺伝子の変異が病気の原因となることを世界に先駆けて突き止めました。たとえば小﨑教授と小児科の武内俊樹専任講師は、同じ症状の組み合わせとCDC42という遺伝子異常を持つ患者さんが複数いることを発見しました。その後、この病気は「武内・小崎症候群(たけのうち・こさきしょうこうぐん)」と名付けられ、国が支援する小児の難病(小児慢性特定疾病)に指定されました。
「この病気はCDC42遺伝子の違いのために細胞が腕を伸ばしていくプロセスが少し異なっているという特徴がありました。たとえば神経細胞は周りにネットワークを張ったり、血小板は血小板が作られて血管の中に出てくるときに細胞の腕を伸ばしたりする仕組みがありますが、それが生まれつき少し違っているために脳の神経のネットワークの作られ方が違っていたり血小板の大きさが異なってしまったりするのです。」
日本国内には5人、国外には20人程度しかいないというこの珍しい病気は、CDC42遺伝子の機能が強く働きすぎているために起きていました。
「CDC42の機能亢進は神戸大学の基礎研究の先生が見つけてくれました。そこでCDC42を抑制できれば治療につながる可能性があります。」