J Am Coll Cardiol.
2025 May 13;85(18):1792-1795.
Nobuhiro Ikemura, Paul S. Chan, David J. Cohen, Kevin F. Kennedy, Anezi Uzendu, Shun Kohsaka, and John A. Spertus
心臓カテーテル治療での造影剤、その使用量は減っているのか?
―全米300万人超のレジストリ研究から見えてきた現状―
心臓カテーテル治療(PCI)は、狭くなった冠動脈を広げる治療法であり、循環器内科の代名詞的手技といえます。しかし、その際に腎臓に負担をかける造影剤なしでは手技を行う事ができず、その使用量をいかに少なくするかということが世界的な課題となっています。今回の研究で筆者(池村)は、米国Spertus教授と香坂准教授(循環器内科)の指導の下で、米国の全国データベース(ACC-NCDR)を用い、2018年から2022年に行われた約312万人のPCI症例を解析しました。その解析の正当性や結果の検証に工夫を要しましたが、結果として造影剤の平均使用量は(年齢が高くなり、手技も複雑化していたにもかかわらず)168mLから150mLへと減少していました(図)。また腎障害発生のリスクが高い患者では、さらに少ない造影剤で治療が行われている傾向も確認されました。一方で、個々の医師の造影剤使用量には大きなばらつきがあり、過去5年間で使用量を20%以上減らした医師は全体の2割程度に留まっていました。ACC-NCDRと本学は以前より多数の共同研究を行ってきました。本研究は、PCIの安全性向上に向けたこれまでの努力の結果を示すと同時に、「改善の余地を残す」 領域(Evidence-Practice Gap)を浮き彫りできたものと考えています。
(循環器内科学教室 香坂 俊、池村 修寛)
Nature Communications.
2025 September 10; doi:10.1038/s41467-025-63466-3
Noriaki Oguri, Chie Kobayashi, Yuri Ozawa, Toshihiko Kimura, Yuu Nishinarita, Haruka Wada, Nobuki Nemoto, Masami Narita, Shinji Tanigaki, Tomoko Hanawa, Jun Miyoshi*, Tadakazu Hisamatsu* (Corresponding authors)
妊娠早期の腟内にLactobacillus属が
多く存在することが良好な妊娠経過と関連する
妊娠・周産期の母児マイクロバイオームは、母親の健康や妊娠経過、出生児の発育に影響を及ぼすと考えられていますが、「健常マイクロバイオーム」の定義は確立していません。「健常マイクロバイオーム」は、新たな予防医療や治療の目標となる可能性があります。本研究では、国内の妊婦・出生児の腟内・腸内細菌叢を妊娠12週から出産後1ヶ月まで追跡しました。その結果、Lactobacillus属が妊娠早期の腟内に多く存在すると、妊娠が38週以降まで継続する割合が高いことが明らかとなりました。そして、海外コホート研究とは異なり、日本人妊婦の腟内のLactobacillus属の中ではLactobacillus crispatusが優勢でした。出生児の腸内細菌叢では、母体の様々な部位と共通する細菌群が検出されるとともに、細菌叢が出生後早期から劇的に変化しながら構築されていくことが示されました。本研究の成果は、わが国における妊娠・周産期の母児の「健常マイクロバイオーム」を理解する第一歩になると考えられます。また海外研究との異同を追究することは、ヒトの「健常マイクロバイオーム」の本質の解明につながることが期待されます。
(杏林大学医学部消化器内科学 三好 潤)
Nature Cardiovascular Research.
2025 September 10; doi : 10.1038/s44161-025-00698-y
Jin Komuro, Hisayuki Hashimoto, Toshiomi Katsuki, Dai Kusumoto, Manami Katoh, Toshiyuki Ko, Masamichi Ito, Mikako Katagiri, Masayuki Kubota, Shintaro Yamada, Takahiro Nakamura, Yohei Akiba, Thukaa Kouka, Kaoruko Komuro, Mai Kimura, Shogo Ito, Seitaro Nomura, Issei Komuro, Keiichi Fukuda, Shinsuke Yuasa & Masaki Ieda
Kaneko T, Kagiyama N, Okazaki S, Amano M, Sato Y, Ohno Y, Obokata M, Sato K, Morita K, Kubo S, Izumi Y, Asami M, Enta Y, Shirai S, Izumo M, Mizuno S, Watanabe Y, Amaki M, Kodama K, Otsuki H, Naganuma T, Bota H, Yamawaki M, Ueno H, Nakazawa G, Hachinohe D, Otsuka T, Saji M, Yamamoto M, Hayashida K.
Wakisaka Y, Sugimoto S, Oda M, Pastuhov S, Fujii M, Sato T.
Tsao MS, Rosenthal A, Nicholson AG, Detterbeck F, Eberhardt WEE, Lievens Y, Lim E, Matilla JM, Yatabe Y, Filosso PL, Beyruti R, Nishimura KK, Travis WD, Osarogiagbon RU, Rami-Porta R, Rusch V, Asamura H.
