免疫チェックポイント阻害薬の普及に伴い抗腫瘍免疫の研究が盛んに行われていますが、免疫細胞がどのような組み合わせで腫瘍に浸潤しているのかを直接かつ網羅的に観察した研究は少ないのが現状でした。そこで我々は、多重免疫染色とクラスター分析を組み合わせて肝細胞癌の免疫微小環境を分類することを試みました。これにより、肝細胞癌の免疫微小環境が大きく3種類に分類され、T細胞浸潤に加えてB細胞/形質細胞浸潤に特徴づけられる「Immune-high」群に属する肝細胞癌の予後が非常に良いことがわかりました。興味深いことにImmune-high群は予後不良群と考えられる低分化型肝細胞癌に比較的多く集積し、低分化型肝細胞癌や、さらに強い予後不良因子であるCK19陽性肝細胞癌においてもImmune-high群に属するものは予後が良いことがわかりました。また、肝細胞癌が多段階発癌の良いモデルであることを用いて、腫瘍の免疫微小環境が多段階発癌の過程に伴い段階的に変化することを示しました。これらの結果は、免疫微小環境を病理学的に評価することの意義を改めて示すとともに、ヒト腫瘍に浸潤するB細胞/形質細胞の機能解析の必要性を示すものと考えています。
(病理学教室教授 坂元亨宇 64回、
病理学教室助教(現アメリカ国立がん研究所客員研究員)紅林 泰 90回)