慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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第7回日本消化管学会総会学術集会

氏名

三上 洋平
GCOE RA
内科学(消化器内科)

詳細

GCOE Young Researcher Support Plan(2010年度)
参加日:2011年2月18日~2011年2月19日

活動レポート

今回第7回日本消化管学会総会学術集会に参加させていただき、" T-bet分子を発現する腸炎惹起性Th1 CD4 T細胞とTh17から発生するTh1様CD4 T細胞"というテーマで発表させていただいた。GCOEの炎症・免疫制御と組織再生というテーマの中で、私の今回の発表は、炎症、特に腸管炎症における免疫学的発症機序より免疫制御を目差すものである。具体的には、近年Keystone symposiaでも発表が相次いでいるように、IL-17産生性のT cell subsetであるTh17細胞は様々な細胞の総称である。我々の研究では、in vivoにおいて、定常状態のTh1細胞に加えて、腸炎状態で出現するTh1細胞はRORgt陽性のTh17細胞よりIL-17、IFNgのDouble producerであるTh17/Th1細胞を経て、RORgt陽性のTh1細胞へと分化するものが多く存在していることを見いだした。即ちこれは近年報告されている、Pathogenicになり得るTh17細胞の存在と矛盾しない知見であると考えている。このTh17→Th17/Th1→Th1細胞へのpathwayを抑制するのがTregの1つの働きであることも我々はin vivoで示した。

これに関連して、同じセッションでは、Ciclosporin投与により、TGF-beta発現が亢進し、腸炎抑制につながるとの報告がみられた。TGF-betaはそのサブタイプによりTh17細胞に対して抑制的にも炎症惹起性にも働きうるサイトカインであり、報告はされていなかったが、Ciclosporinによりin vivoで抑制性のTh17細胞が増加していれば面白いのではないかと感じた。

サイトカインの分子標的療法の可能性を示唆する知見としては、東京医科歯科大学の根本先生がIL-7シグナルについての発表をされていた。IL-7は腸管局所のみならず、骨髄に於いても腸炎惹起性メモリーT細胞の維持と腸炎発症に重要な働きを示しているという報告であり、炎症性腸疾患が単なる腸管の免疫異常だけでなく、全身病であるということをより印象づける素晴らしいデータであった。

また、Colitic cancerにおいてIL-6をがん細胞特異的に抑制する方法、IgGの糖鎖修飾が腸炎と健常人の間で差があるという知見など、我々とは異なるアプローチで腸炎解明に近づいているのは非常に興味深かった。


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