研究者プロフィール

博士（医学）

内視鏡診断、内視鏡治療、低侵襲療法、ESD

内視鏡治療は低侵襲治療の代表的なものとして世界的にも注目されている。従来は大型病変の治療は困難であったが、我々は細径スネアの先端をナイフ代わりに用いて、組織を切開して腫瘍を切除する技術を開発した。これが後に切開と剥離により腫瘍を根こそぎ切除するESDへとつながった(Yahagi et al. Digestive Endoscopy 2004)。その後、内視鏡機器メーカーとの産学共同研究で新たな治療用内視鏡やナイフなどの開発を行ってきた。さらに、製薬メーカーとの産学共同研究として、薬剤の隆起形性能力や組織障害性などを検討した（Fujishiro, Yahagi et al. Endoscopy 2004, Fujishiro Yahagi et al. Gastrointestinal endoscopy 2005）。結果的に、従来から用いられてきた高張液は組織障害性が非常に強く危険であり、より等張に近く粘性の高い薬剤の方が安全で有効であることを明らかにした(Fujishiro Yahagi et al. Gastrointestinal endoscopy 2006)。
また海外との共同研究で、高圧で組織切開能力のあるwater jetと高周波処置具を組み合わせたHybrid knife (Yahagi et al. Endoscopy 2009)や、切開能力を上げながら出血を防止する高周波モード (Yahagi et al. Endoscopy submitted)などの開発もおこった。現在は、目的組織を把持してトラクションをかけ切除を容易にするためのリフティング装置や特殊形状ナイフ等、より安全・確実な切除を目指した様々な機器開発を進めており、複数個の特許も出願している。
一方、最近では治療内視鏡をさらに発展させたものとしてNatural Orifice Transluminal Endoscopic Surgery (NOTES)が注目されている。これは経消化管あるいは経膣的に軟性内視鏡を体腔内に挿入し、治療を行う新しい技術である。その基本テクニックはESDと酷似しており、我々の培ってきた技術を応用できる余地がきわめて大きいと考えられる。今後は外科グループと共同で、消化管腫瘍の全層切除や、経消化管的な軟性内視鏡と腹腔鏡のコンビネーションによる消化管外臓器の処置など、独創性のある技術を開発していきたい。

修士、博士