2019年11月2日(土)、慶應義塾大学信濃町キャンパスにて、脳科学を啓蒙する世界的なキャンペーン「世界脳週間(Brain Awareness Week)」の一環として、脳科学に関する研究室の見学を行うイベント「脳学問のすゝめ」を開催しました。
「世界脳週間」とは、脳科学の、科学としての意義と社会にとっての重要性を一般に啓蒙することを目的として、世界的な規模で行われるキャンペーンです。1990年代よりアメリカで始まり、ヨーロッパ・南米でも、公開講演・討論、病院や研究所の公開、学校訪問などの公開行事が実施されています。2000年代からは日本でも脳科学の研究者が中心となってこのキャンペーンに参画し、全国の大学・研究所で脳科学に関するさまざまな行事が行われています。
慶應義塾大学医学部では、これまでも脳・神経科学関連の研究室紹介などの活動を行ってきました。本年から世界脳週間に参画するにあたり、大学での研究に関心のある高校生に、脳・神経科学そのものの面白さや、研究の最前線の一端に触れていただく機会として、今回のイベント「脳学問のすゝめ」を開催しました。参加定員20名に対し、慶應義塾大学のホームページや学校に掲示されたポスターを通じて、関東地方を中心に全国から申し込みがあり、数日で定員に達しました。
当日は、天谷医学部長による挨拶の後、生理学教室の柚﨑教授より脳・神経科学研究についてのレクチャーがなされ、研究室見学では4つの教室(生理学(神経生理)・生理学(神経科学)・薬理学・電子顕微鏡室)を順に回りました。
生理学(神経生理)教室では、パッチクランプ法と最新の光遺伝学技術を用いた生きた脳組織からの神経活動の記録、生理学(神経科学)教室では、iPS細胞の培養、移植治療した脊髄損傷マウスの回復の様子が紹介されました。電子顕微鏡室では、世界最速の電子顕微鏡をはじめとした複数の電子顕微鏡で脳のどのような構造を観察しているのか見学し、薬理学教室では、脳に効く薬に関する研究についてのレクチャーと独自開発された顕微鏡の見学が行われました。参加した高校生は、物理や化学などさまざまな分野の知識や技術が結集され、新しい研究を行っていることに強く興味を持っていました。研究室見学終了後は各教室のスタッフと、脳科学や研究について活発な意見交換が行われ、盛況のうちに終わりました。参加した高校生からは、「脳科学といってもさまざまな分野の研究があって面白かった」「臨床医を目指しているが研究にも興味を持った」などの感想が寄せられました。
慶應義塾大学医学部では、今後も脳科学をはじめとする研究を紹介するさまざまな企画を開催する予定です。