2018年12月2日、慶應義塾大学医学部主催による第3回健康医療ベンチャー大賞の決勝大会が開催されました。
今回、3回目を迎える本コンテストは慶應義塾大学内、他大学、さまざまな企業からの応募があり、第1・2回目を超える100以上のチームから応募がありました。
「育てるベンチャー大賞」というテーマのもと、決勝に選出された6チームは各界著名人によって行われるアントレプレナーシップブーストセミナー、専門医療者ヒアリング、医療ビジネスの専門家によるメンタリングを受け、それぞれのビジネスプランを入念にブラッシュアップしました。さらに、今回から始まった専門医療者ヒアリングにおいては、各チームに最適な専門医療者を慶應大学医学部ならではのネットワークで、各々のビジネスプランにマッチングさせることで、医療現場に即した非常に専門的な観点からプランを深化させました。
当日の決勝大会は、日本橋ライフサイエンスハブにて開催され、会場は200名を超える多くの観覧者の熱気に包まれました。
学生部門での優勝およびオーディエンス賞を勝ち取ったのは、介護の人手不足問題をAI技術で解決しようとするチーム「METRICA」です。医療とテクノロジーの両面において非常に専門性の高い緻密なプランであり、AI技術のデモ動画を披露するなど学生部門とは思えないほど完成度の高さが勝因となりました。
社会人部門で優勝およびオーディエンス賞を受賞したのは、肺がんの高精度診断を可能とした「Icaria株式会社」でした。がん診断バイオマーカーとして注目される尿中miRNAを対象に、機械学習を用いた独自のプログラムを用いることで、98%の精度でがんを検出することを可能としました。綿密な基礎研究の上に確立された医療ベンチャーであり、将来臨床の場で活用されることが強く期待される医療ビジネスとして高く評価されました。
また、協賛の株式会社プラメドによる企業賞には、社会人部門からチーム「アトピヨ」が選ばれました。このチームは、アトピー患者専用のSNSを開発し、2018年7月25日にApp Storeからリリース後3週間で1,000ダウンロードを突破した実績が評価につながりました。三井不動産株式会社による企業賞には、学生部門からチーム「AEDi」が選ばれました。このチームは、救急車が到着するまでに一般の方が活用することのできるAEDを、より効率的に使用するためのプランを提案しました。その社会的な意義の高さや、AEDに付加価値を加えるという新規性が評価され受賞に至りました。
学生部門チームの「有限会社魔法アプリ」は、VR(バーチャルリアリティ・仮想現実)を用いた不安障害に対する暴露療法を開発しました。すでに一部の医療機関でも使用されており、惜しくも受賞は逃したもののオーディエンスから高い評価を受けました。社会人部門の「Flora Assistant」は、腸内細菌を用いたアスリートの健康管理の仕組みを提案しました。現時点のエビデンスもさることながら、今あるデータを用いるだけでなく、利用者からデータを集めることでさらに大規模なデータベースを作ることまで想定されており、その発展性の高さにも注目が集まりました。
今回の決勝大会では、審査員より、実用化に向けた完成度の高い発表が多くなされたことが評価された一方で、課題として世界に先立つ専門性をビジネスにつなげるネットワーク作りが強く求められていることが挙げられました。