慶應義塾大学医学部では、教育目標(卒業時コンピテンス)の一つに「国際医療人としての資質」を掲げており、学生に国際交流を奨励しています。

学生の国際交流の最大のプログラムは、学部5年生での短期海外留学プログラム【臨床】です。また、英語を公用語とする沖縄科学技術大学院大学(OIST)との連携プログラムには、学部2年生を中心としたSummer Camp、学部3年生の自主学習としてのResearch Internshipがあります。また正課のプログラムではありませんが、コロンビア大学「International Collaboration and Exchange Program」(通称ICE Program)、ラオス・プライマリヘルスケア保健医療チーム活動プロジェクト等があります。

学生の課外活動として、南米への派遣を行う国際医学研究会(IMA)日韓医学生学術交流会日中医学生交流協会アフリカ医療研究会などの団体があり、いずれも活発に活動しています。

短期海外留学プログラム
【臨床】

短期海外留学プログラム【臨床】では、面接で選抜された学部5年生が、希望する海外の病院にて1~3月期の約1ヶ月間臨床実習をおこないます。このプログラムは、安達正純(23回)および芦刈宏之(37回)両教員の発案により、1984年にスタートしました。その後も海外で活躍する多くの塾員の尽力により、現在では交流先は20校あまりに達しました。

医学部では、より多くの学生が本プログラムに参加できるように支援を進めており、本プログラムの参加者は2023年度には約50名にまで増えました。派遣先も米国、英国をはじめ、スウェーデン、ドイツ、フランス、オーストリア、オーストラリア、中国、ブラジルなど多様です。米国の臨床実習では、日本の研修医と同等の役割を与えられ、患者さんのファーストタッチからカルテ記載、治療方針をたてるところまでをおこないます。これらをすべて英語で進めるため、多忙で濃密な1ヶ月になりますが、このプログラムを体験した学生は、一回りも二回りも成長して日本に帰ってきます。

また、この短期海外留学プログラム【臨床】に参加する学生のために、外国人教員(医師)が渡航前に10回程度のPreparation Courseを開催し、英語での診療技術の獲得の機会を提供しています。

最近の派遣実績:
コロンビア大学、ワシントン大学、ミネソタ大学、ノースウェスタン大学、ハワイ大学(以上、米国)、キングズ・カレッジ・ロンドン(英国)、カロリンスカ医科大学(スウェーデン)、ケルン大学(ドイツ)、リール大学、ソルボンヌ大学(以上、フランス)、エラスムス大学(オランダ)、インスブルック医科大学(オーストリア)、シドニー大学(オーストラリア)、北京大学(中国)、サンパウロ大学(ブラジル)など

【学生の声:コロンビア大学での短期臨床留学( 医学部6年)】

協定校のコロンビア大学腎臓内科では、現地の研修医のように臨床の第一線で日々学べ、大変刺激を受けました。私は帰国生ですが、患者さんとの距離のとり方や現地の生活など苦労も多く、大きく成長できました。

【学生の声:ケルン大学での短期臨床留学(医学部5年)】

ドイツ・ケルン大学整形外科での実習では、現地の”習うより慣れよ”のモットーのもと、様々な手技の経験を積ませていただきました。また現地の医学生との交流を通して、文化や考え方の違いに触れることで、医学生・医師としての今後の在り方について考え直す貴重な機会となりました。

【学生の声:キングズ・カレッジ・ロンドンでの短期臨床留学(医学部5年)】

ロンドンでの実習は、手技や診療への学生参加という面ではアメリカで実習をした友人と比べて少ないと感じましたが、Major Trauma 科 (外傷外科) というNHS (イギリス国営医療制度) の最前線で、制度の実際や人種的多様性を目の当たりにし日本の医療との違いを学ぶことができ、大変良い経験になりました。

【学生の声:ワシントン大学(セントルイス)での短期臨床留学(医学部5年)】

アメリカ・ワシントン大学にあるアルツハイマー・センターで、最先端の臨床試験や日米の医療の違いを学びました。医療制度、患者さんや同僚とのコミュニケーション法等、全てが新鮮で視野を広げることができました。その後、日本には存在しない神経領域に特化したICUに私費留学し、神経疾患に対する集中治療の考え方を学び成長することができました。

【学生の声:シドニー大学での短期臨床留学(医学部5年)】

University of SydneyのRoyal North Shore Hospitalにて、4週間の臨床実習をさせて頂きました。シドニーは人種が非常に多種多様であり、医療が人種に合わせて、適切に提供されていることが印象的でした。その国ならではの働き方や人々の価値観、生活の仕方など日本との大きな差異を感じ、多様性と寛容性の精神を育むことは海外臨床実習の最大の醍醐味です。何もかもが常識の範疇を超える、そんな未知の世界へ一歩足を踏み出してみませんか?

沖縄科学技術大学院大学(OIST)との連携プログラム

沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)との連携活動は、医学部中心に2019年から開始され、医学部生のResearch Internshipへの派遣、理工学部を加えた両大学教員の研究紹介イベント「Showcase talk series」を開催しています。2022年度からは、教育面での連携活動として、International Research Summer CampがOISTで開催され、主に学部2年生約20名が公用語を英語とする環境下で研究の基礎的能力を身につけました。また、2023年度からは、学部3年生が、医学部必修科目「自主学習」の学外派遣先として、OIST Research Internshipに参加し、約4か月間の研究を行いました。

International Research Summer Campの様子

【学生の声:OISTサマーキャンプ(医学部2年)】

OISTサマーキャンプは2022年から開始した主に医学部2年生を対象とした国際交流プログラムです。OIST(沖縄科学技術大学院大学)は、沖縄県恩納村にある学術機関で世界60の国・地域から学生・研究者が集まり、医学のみならず物理学・海洋生物学など多様な分野を研究対象ととしている89のユニットから構成されます。公用語は英語で、キャンプ中は研究体験(Hands-on lab experience)やプレゼンの講義、また様々な地域出身のPhDの学生との交流機会を通じて、学際的で有意義な体験をすることができました。皆さんも是非奮ってご参加ください。

コロンビア大学「International Collaboration and Exchange Program」(通称ICE Program)

米国コロンビア大の国際交流プログラムで、慶應義塾大学医学部は2021年から参加しています。本プログラムに協定校として登録されている世界各国の名門医学部・歯学部大学の学生のみが参加でき、国際医療におけるグローバルリーダーを育てることを目的としています。学生同士の自発的なインタラクション、ネットワーキング形成、グループディスカッション、プレゼンテーション、長期休暇を利用した交換留学を行います。国際医療や基礎科学系の広い分野を対象に学んでおり、医学的専門性が高くない低学年からの参加が可能です。

プログラム詳細:https://www.internationalcollaborationexchange.org/

プログラム参加大学  (2023年12月現在26校)
【North America】
Columbia University
Harvard Medical School
McGill University
Stanford University
University of California San Francisco
Yale University
【UK】
University of Cambridge
King’s College London
【Europe】
Charité – Universitätsmedizin Berlin
Ludwig Maximilians University
Martin Luther University
Medical University of Vienna
University of Barcelona
University of Copenhagen
University of Helsinki
University of Milan
【Australia/Pacific】
The University of Sydney
【East Asia】
Keio University
Kyoto University
Tokyo Women’s Medical University
National Taiwan University
Chinese University of Hongkong
Seoul National University
National University of Singapore
【East Africa】
University of Nairobi

ラオス・プライマリヘルスケア
保健医療チーム活動プロジェクト

2011年より医学部、看護医療学部、薬学部の医療系3学部合同教育として開始されたプロジェクトです。ラオスの首都ビエンチャンおよび農村においてプライマリヘルスケアと国際保健に関する実習を行います。

留学生の受け入れ

海外医学部からの実習生の受け入れ(International Student Clinical Elective Program)も積極的に行っており、2017年度は120名を越える海外の医学部学生(以下、留学生)が慶應義塾大学医学部で臨床実習を行いました。2020年度、2021年度はコロナ禍のため、受け入れを中止していましたが、2022年7月から実習生受け入れを再開し、2023年度は医学部・全学海外協定校から約60名の留学生を受け入れています。学部5年生を中心に、留学生のバディとして、キャンパスツアーや臨床実習のサポートのボランティアを行なう機会があり、留学生との交流が盛んに行われています。特に短期海外留学プログラム【臨床】に参加する医学部生は、バディ制度を通じて、派遣先大学から来る留学生との交流の機会もあり、留学前に必要な情報を得、留学中にバディと再会するなど、交友を深めています。