将来のがん医療を担う医療人の養成を目的とした文部科学省補助事業「がんプロフェッショナル養成プラン(2007 年~2011 年)」「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン(2012年~2016年)」「多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)養成プラン」(2017年~2021年)」(通称:がんプロ)に参画し、慶應義塾大学では高度がん医療開発を先導する専門家を養成するための各種コースを開設・推進してきました。2023年度より、「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン」がスタートし、本事業によってがん医療の現場で顕在化している課題に対応する人材を育成します。
また、増加するがん患者に歯止めをかけるため、AI技術を応用した予防医学もテーマに入れました。ゲノム診断をもとにした個別化医療を推進しつつ、新たな治療方法を開発できる人材の育成をレギュラトリーサイエンスの視点を交えながら推進していきます。
テーマ①:がん医療の現場で顕在化している課題に対応する人材養成
「誰一人取り残さないがん対策の推進」を実践していくためには、患者のニーズにあったきめ細やかな対応が求められます。しかし①患者の苦痛を理解し寄り添う痛みの治療・ケア、終末期医療を担う専門家や、②個別化医療や希少がんの診断、治療を担う様々な職能を有する専門家、③高齢者や心・腎機能に併存疾患を抱えるがん患者への安全な医療の提供を可能とする学際領域の専門家が現場では必要とされていますが、十分とは言えません。本事業では参加校の連携を強化し、人材不足が顕在化しているこれらの専門家を養成して、本課題の解決を目指します。
テーマ②:がん予防の推進を行う人材養成
がんは我が国の死因の第一位の疾患であり、効率的な予防医療の確立は重要な課題です。医療ビッグデータを利用したAI技術の進展は高精度の診断および予後予測法の開発に結びつきつつあります。このような高精度の識別能・予測能をがん予防に展開させていくためには、医療の視点からAIの原理を理解するがん専門医療人の養成が必要です。さらに治癒率・生存率の向上が得られている中で、がんサバイバー・家族へのケアも大きな課題となっています。個別性のある医療・ケアの提供は極めて難しく、必要となる基礎的な知識と技能をがん診療に携わる多職種が習得することで、遺伝性腫瘍患者やがんサバイバーに対して誰一人取り残さない全人的なケアが可能となると考えられます。
テーマ③:新たな治療法を開発できる人材の養成
分子生物学の知見の蓄積により、個別化医療の礎となるがん遺伝子パネル検査や、CAR-T療法などの新規治療法が実臨床に導入されつつあります。しかし、これら新規技術により恩恵を受ける患者は一部に留まっていることは否定できません。がん克服のブレイクスルーを達成するには全ゲノム解析時代を迎え、個別化医療に精通し、基礎および臨床試験を通じて新薬や新規技術の開発、管理を担える人材の育成が必須です。がん治療薬の基本的知識、臨床研究の立案・計画、実施調整、関連する法規制について学び、これらの知識に基づいて創薬ないしレギュラトリーサイエンスを駆使して個々の患者の治療戦略も構築できる人材を養成します。また、医療統計学、ビッグデータやAIを用いたインシリコ創薬、遺伝子療法、細胞療法、がんゲノム医療など最先端の医療技術開発など創薬研究に関する幅広い知識を持った人材を養成します。
慶應義塾大学においては、大学院修士・博士課程と下記の7つのインテンシブコースを設定いたしました。
1. がんゲノム医療実装化コース
2. 痛みの集学的治療コース
3. 薬剤師緩和医療実践コース
4. 小児がんコース
5. 骨転移診療コース
6. ライフステージ別がんリハビリテーション習得コース
7. がん薬物療法実践コース
連携校は、東京医科歯科大学、国際医療福祉大学、順天堂大学、東海大学、東京歯科大学、東京薬科大学です。人材交流あるいは教育機会の相互提供にも力を入れて参ります。
大家基嗣
がん医療に関わる医療従事者を対象に、がんの診断・治療・研究に必要な知識と技術を有するがん専門医療人材を養成するためのコースを開設しています。
修士課程では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の資格を持つ方を対象とし、従来の必修科目に加えて、「リハビリテーション医学」「がんのリハビリテーション学」を学びます。そして、がん患者特有に生じる各種機能障害を予防、治療するためのリハビリを行える専門療法士を養成し、がんチーム医療の中でリハビリを実践する臨床能力と研究能力を身につけ、将来、指導的役割を担える人材の育成を目的としています。
がんプロ大学院生(修士課程)のコース概要(一例)
1年 | 前期 | 修士課程修了に必要な単位の修得に加え、がんプロ科目の単位を修得する |
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後期 |
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2年 | 通年 |
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博士課程では、指導教授のもと臨床研究テーマを選択・実施するとともに、がん医療の基盤的知識及び幅広いがん診断・治療に関する講義を受講します。また、複数の診療科(化学療法・分子標的治療、放射線治療、低侵襲外科、緩和医療、リハビリなど)をローテートすることで、各診療科における最新のがん医療を実地で研修し、がん診療で必須な集学的治療・チーム医療を身につけます。4年間を通じて、高度がん医療開発を先導する専門家の養成を目的としています。
【 臨床腫瘍学分野 】
基礎研究段階から臨床応用への橋渡し研究を推進する
【 臨床腫瘍学分野 】
がん患者の治療計画をリーダーとして立案遂行する訓練により、専門知識と技術を磨く
がんプロ大学院生(博士課程)のコース概要(一例)
1年 |
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2年 |
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3年 |
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4年 | 学位申請 |
医療科学系博士課程では、がんプロフェッショナル養成プログラム以外にも、人を対象とした臨床研究・疫学研究の担い手となるプロフェッショナルを養成するプログラムを提供しています。具体的には、以下のようなテーマでの研究を希望する場合に該当します。
1 臨床医学分野での臨床試験、臨床疫学研究
2 医学全般にわたる医療技術評価研究
3 予防医学分野での疫学研究
質の高い臨床研究の実施には、医師に加え、看護師、薬剤師、さらには、リサーチコーディネータ、データマネジャー、生物統計家など、幅広い人材が必要とされています。したがって、本プログラムでは、医師に限らず、広く有為な人材を求めます。ただし、臨床研究に必要な一定の経験や専門的知識を有することが 前提となりますので、希望される方は出願期間前に指導希望教員にご相談ください。なお、医学研究系専攻と医療科学系専攻 のいずれでも、前記の研究を行い、博士(医学)を取得することが可能です。この点についても、事前に指導希望教員にご相談ください。
次世代のがんプロフェッショナル養成プラン事務局
〒160-8582
東京都新宿区信濃町35番地
慶應義塾大学信濃町キャンパス学生課
電話:03-5363-3662(土・日・祝祭日を除く9時から17時まで)
E-mail :
ganpro-jimushitsu[at]adst.keio.ac.jp
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