徳島から東京へ
医師としての未来への展望

医学部5年生(2015年時) 木下雄仁さん

慶應義塾大学医学部を選んだ理由とは

Q:なぜ慶應義塾大学医学部へ進学されたのでしょうか?

父や祖父など身内に医者がいたこともあり、小さい頃から医師という存在は身近にありました。彼らが働いている姿を見て、自然に憧れや尊敬をもつようになり、自分も医師を目指しました。地元の徳島大学に進学する友人も多い中、高校3年生の夏に慶應義塾大学の模擬試験を受けたことがきっかけで、入学を考えるようになりました。学費のことを考えると地方の国公立大学という選択肢もあったのですが、東京に出たいという気持ちと家族の後押しから、慶應への入学を決めました。

Q:慶應義塾大学医学部のイメージは、入学前後で違いましたか?

徳島では慶應義塾大学出身者が周りにいない環境でしたので、入学前後ではイメージに差があったことも多くありました。例えば、慶應義塾大学医学部は縦の繋がりが強い、関連病院が多いということを聞いており、簡単には入れない強い絆という壁があるのかな、と感じていました。しかし、入ってみるとそのような壁はなく、むしろ共通した精神を感じることができました。慶應義塾大学の特徴でもあると思いますが、福澤諭吉先生の教えである「独立自尊」や「半学半教」といった言葉をよく先生や先輩方が口にされます。福澤先生の前では、皆が生徒というような気持ちを持ち続けて教える側も教わる側も助け合うという意味で、その精神を個々が脈々と受け継いできています。そのような理念、精神が、卒業後も続く連帯感を生み出しているのだと思います。

Q:外部進学者ですが、内部進学者との違和感はありましたか?

そうですね。入学当初、環境に慣れるまではありましたが、内部も外部も関係なく、すぐに打ち解けられました。慶應義塾大学医学部では内部進学者が3〜4割おり、当たり前ですが、センター試験を経験したこともなく、受験競争とはまた異なる環境で、内部進学の競争を勝ち抜いてきた人たちです。僕は受験勉強を頑張った結果ここに来られたと思っていますが、受験やテストで結果を残すことが絶対だった価値観が良い意味で壊され、刺激を受けています。勉強面だけでなく、部活動やコミュニケーションにおいて、切磋琢磨しながらお互いを高めあえていると感じます。

臨床実習(病院内での実習)を通してみえたこと

Q:5年生になると臨床実習(病院内での実習)が始まりますが、どのような印象ですか?

7名の班でやっているのですが、みな熱心に取り組んでおりモチベーションが高いので、毎日がとても楽しく充実感があります。大変なこともたくさんありますが、4年生までの座学ではなく、実際に患者さんを診察してカルテを書いたり相談したりしていると、目の前の患者さんを良くしたいという気持ちが芽生えてきます。医師に一歩一歩近づいている感覚が高まり、自分なりにもっと深く学びたいという意識も強くなってきていると思います。自主的に論文を検索して英語で読んだりするのも苦になりません。机上の勉強だけですと、そこまでできていなかっただろうと思います。

医学部生の日常生活とは

Q:部活動はされていますか?

軟式庭球部に所属しています。昔からラケットを使うスポーツが好きで、卓球とバトミントン、硬式テニスをやっていたのですが、大学入学を機に、軟式テニスに挑戦しようと思い始めました。基本的に常に新しいことに刺激を求めるタイプなので、東京の大学に行きたいと思った理由もそういう性格だからかもしれません。4年生の時には主務を担当し、飲み会や合宿の準備、他の幹部のサポートなどをしていました。

Q:部活動と勉強の両立は、大変ではないですか?

部活動は週3日ですが、効率的な時間の使い方を心がけています。引退はせずに6年生の夏まで続けるつもりです。部活動ではほとんどの人が初心者なので、主に5、6年生が指導にあたるのですが、後輩が上手くなってゆく過程を感じるのも楽しいと思える瞬間ですね。部活動以外にも、個別指導のアルバイトを続けています。勉強以外の活動は、やっていて楽しいですし、これらの活動での繋がりも、将来的にずっと続く絆になると感じています。

慶應義塾大学医学部の特色でもありますが、会話の中で「何部?」と必ず聞かれます。それは、学生の9割が何らかの部活動に所属しているからです。残りの1割の人たちも学生団体に入ったり、会社のインターンとして働いたりと、目覚しく活躍しています。必ずしも部活動に入らなければいけないということはありませんし、部活動に入っても結果を出さなければならないというわけではないので、これから慶應義塾大学医学部を目指す方々も、それ自体はあまり高いハードルだと感じずに来てほしいです。

思い描く未来像とは

Q:今後の進路については描けていますか?

一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、病理学という領域に関心があります。よくドクター・オブ・ドクターといわれますが、すべての臓器を扱い、それぞれの病気を顕微鏡等の器具を用いて調べる仕事で、ちょうど臨床と研究の中間にある橋渡し的な存在です。直接患者さんとお会いして診察をしたり、治療で薬を出したりはしませんが、診断を決める重要な仕事ですし、大学病院の場合は研究もします。

きっかけは、3年生の時の講義でした。病理学教室の授業がとても面白く、すべての授業に出席していたのですが、そうしていくうちにどんどんのめり込んでいきました。その後、4年生になり、学生一人ひとりが自身の研究テーマを決め、3ヶ月間研究に取り組む「自主学習」において病理学のテーマを選択しました。そこで、病理の教授が実際に働いている姿を拝見して、やはり面白いと感じました。3年生の時に感じた気持ちがずっと燃え続けている今、病理学の道に進んで仕事をしたいとあらためて感じています。

受験を考えているみなさんへ

Q:慶應義塾大学医学部を目指そうと考えている方々へ、メッセージをお願いします

慶應義塾大学医学部を勧めたい気持ちを強く持っています。
僕のような地方出身者にとって、私立の医学部はあまり選択肢にないかもしれません。もともと受けない人が大半で、国公立大学を受ける人が多く、僕が通っていた高校からの進学も15年ぶりと聞きました。徳島は人口が少なく、とても狭い世界でした。小さい頃から成績は良い方でしたが、ここに来てみると周りはそんな人たちばかりで、以前のように一番になれるということはそうそうありません。だからこそ、広い世界でハングリー精神を持って挑戦してほしいと思うのです。

また、慶應義塾大学医学部の教員はとても素晴らしい方々ばかりです。心から尊敬できる先生方が、本当にたくさんいらっしゃいます。例えば、病理学でお世話になった坂元亨宇教授も肝細胞癌では世界で5本の指に入るほどの方です。今は憧れですが、自分もそういう立場になりたいと考えています。臨床もしながら研究も教育にも成果をあげて、後輩も伸ばしていく、教育心のある医師になりたいと思っています。

海外短期留学も予定しています。一度きりの人生ですし、より高みを目指して、ハングリー精神で挑戦したいという気持ちからです。病理学を選ぶということも、難しい領域だからこそチャレンジしたいということなのかもしれません。「井の中の蛙大海を知らず」と言います。大きな世界に飛び込んで自分よりすごい人たちに出会って、さらに自分自身を成長させたいというような燃えるハートを持っている人ならば是非、慶應義塾大学医学部に挑戦してほしいと思います。

デイリーライフ

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ある1日のスケジュール(信濃町キャンパス)

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アルバイト(個別指導)がある日のスケジュール(信濃町キャンパス)

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※所属・学年は取材時のものです。