我々の研究室では、心不全や動脈硬化性疾患など、循環器病の病態解明や新規治療開発に取り組んでいます。研究手法としては、AI画像解析などの機械学習やシングルセル時空間解析など生物情報学を駆使した解析と、動物・細胞モデルを用いた分子生物学的研究手法の双方を行うことを重視しています。日本における死因の第一位は癌ですが、単一臓器由来の死因としては心臓疾患が最も多いと言えます。あらゆる心臓病の終末像である心不全は、近年の高齢化社会を受けて患者数が急増していることから更なる新規治療開発が望まれています。心不全にはさまざまな原因疾患が存在します。遺伝子異常などに伴う心筋症、弁膜症などの構造的異常、など様々な原因がありますが、中でも我々は高血圧や肥満など生活習慣ストレスに起因する心不全を「生活習慣ストレス関連心不全」として扱う概念を提唱し、これらに対する治療開発に注目しています。心不全の治療開発では、従来心筋細胞に着目したものが多いですが、近年では非心筋細胞が病態形成に重要な役割を果たすことが注目されています。特に生活習慣ストレスに起因する心不全では、血管内皮細胞や線維芽細胞など心臓に存在する様々な細胞群がそれぞれ相互作用を及ぼしあいながら病態形成することが重要であると考えています。
我々はこれらの病的状態を可視化するため、生物情報学や機械学習を駆使した手法を積極的に採用しております。細胞群を一細胞解像度で可視化するシングルセル解析や、近年発達している空間オミクスの手法を駆使することで、心疾患の進行過程を時空間的に詳細に解析したいと考えています。さらには人工知能の基盤技術となっている機械学習を積極的に活用した研究を行っています。細胞・組織形態をAI技術を用いて解析し、定量評価する手法を開発し病態マーカーとして活用した創薬開発も実行しております。従来の医学・生物学研究に、情報学・機械学習などを積極的に活用する、領域横断的な研究を実行することで、心血管疾患を始めとする加齢関連疾患を克服し、健康寿命延伸を目指していきたいと考えています。