
産婦人科学(婦人科)教室
教授
2000年3月 | 慶應義塾大学医学部卒業 |
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2000年4月 | 慶應義塾大学医学部産婦人科 研修医 |
2002年6月~2004年4月 | 関連病院へ出向 |
2004年5月~2005年3月 | 慶應義塾大学病院産婦人科助手 |
2005年4月~2008年3月 | 国立がんセンター研究所病理部リサーチレジデント |
2009年4月~2011年3月 | 国立病院機構東京医療センター産婦人科 医員 |
2011年4月~2018年12月 | 慶應義塾大学医学部産婦人科 助教 |
2019年1月~ | 慶應義塾大学医学部産婦人科 専任講師 |
2023年4月~ | 慶應義塾大学医学部産婦人科 教授 |
2011年 | 第49回日本癌治療学会学術集会優秀演題賞 |
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2014年 | 第52回日本癌治療学会学術集会優秀演題賞 |
2016年 | 第68回日本産科婦人科学会学術集会JSOG Congress Encouragement Award |
2019年 | Journal of Gynecologic Oncology Best Reviewer Award |
2020年 | 日本産科婦人科内視鏡学会優秀査読者賞 |
1.子宮体癌/子宮内膜異型増殖症の妊孕性温存療法
子宮体癌およびその前がん病変である子宮内膜異型増殖症(AEH)の標準治療は子宮全摘出術を含む手術療法であり、妊孕性は完全に消失する。それに対する妊孕性温存療法として酢酸メドロキシプロゲステロンを用いた高用量黄体ホルモン療法がある。治療対象は子宮内膜に限局する高分化類内膜癌(G1)またはAEHである。当科は本邦でも多数の高用量黄体ホルモン療法の経験を有しており、初回治療例の病変消失率はAEHで98%、G1で93%であり、パートナーを有する症例の妊娠率は40-50%である。本治療の難点は再発率の高さにあり、AEHの44%、G1の69%で再発を経験する。しかしながら、症例を選択すれば、再度の妊孕性温存が可能であり、AEHで95%、G1で97%、再度の病変消失を経験している。当科では現在、至適フォローアップ方法の確立や、遺伝子パネルシーケンスや免疫組織化学を用いた効果/予後予測モデルの開発を行うとともに、婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)およびそれに所属している多機関と連携のうえ、子宮体癌や子宮内膜異型増殖症に対する妊孕性温存療法後の子宮内再発に対する再度の妊孕性温存療法の第II相試験を進めている。
2.子宮体癌に対する低侵襲手術:センチネルリンパ節生検
子宮体癌は比較的予後良好の悪性腫瘍である。従来は、開腹手術が主流であったが、現在は早期癌に対しては腹腔鏡下手術やロボット支援下手術といった鏡視下手術が主流となりつつある。子宮体癌の標準術式の一部として領域リンパ節郭清が行われることがあり、鏡視下手術においても施行可能であるが、リンパ浮腫やリンパ嚢胞といった有害事象の原因となるため、長期にわたる患者のQOLの低下につながる可能性がある。それを回避する1つの方法としてセンチネルリンパ節(SN)ナビゲーション手術がある。SNは見張りリンパ節とも呼ばれ、そのリンパ節に転移が認められなければ、他のリンパ節にも転移が認められない。すなわち、そのリンパ節を調べることで、無用な領域リンパ節郭清を回避できるという治療法である。当科での子宮体癌を対象とした臨床研究ではSNの同定率は98%、感度や陰性反応的中率はともに100%であり、SN生検を用いた子宮体癌手術の可能性が示された。
2023年4月現在、乳がんや悪性黒色腫では保険適用となっているが、子宮体癌や子宮頸癌、外陰癌に対しても、一部のトレーサーの保険収載が認められ、婦人科領域への実臨床への適応拡大が見込まれている。