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プログラム終了に当たって
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2003年~2008年3月まで5年間行われた、21世紀COEプログラム「幹細胞医学と免疫学の基礎・臨床一体型拠点」(21世紀COE)に続き、2008年から始まったグローバルCOEプログラム「幹細胞医学のための教育研究拠点」(GCOE)が2013年3月で終了を迎えます。それに伴い、GCOEでRAとして活動してきた7人の大学院生たちに集まってもらい、GCOEについて語る座談会を開催しました。
モデレーター:馬渕 洋 |
津山 淳(生理学) |
山田 幸司(病理学) |
原田 聖子(生理学) |
Zachary Yuching Lin(生理学) |
Daniela Yumi Kitashima(皮膚科学) |
吉田 剛(先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門) |
古澤 純一(微生物学・免疫学) |
馬渕先生:
GCOEのRAになって、何が良かったと感じていますか?
津山さん:
いろいろな研究者の方と関わりを持てたことですね。また、これまで英語が苦手だったのですが、英語でプレゼンテーションをする機会がたくさんあったので、上達できたと思っています。オーストラリアでの学会に参加したときに、僕と向こうの研究者たちと4時間くらいディスカッションをしたことがありました。本当にハードで大変だったのですが、とてもいい経験になったと思います。
原田さん:
外国出身の方とディスカッションできる機会があって良かったです。慶應大学には研究室がとても多いので、自ら積極的に動かないと他の研究室の人とは関われません。でもGCOEがあることで、他の研究室の人と自然に話せる機会があり、同学年以外の人とも多くのつながりができました。自分ではできないことや分からないことでも、他の研究室の人に聞いて教えてもらったり、アイデアをもらったりすることもありましたね。
リンさん:
外国人として日本で生活するのは、現実的に考えるととても難しいです。ですが、GCOEでは経済的なサポートもしてくれ、好きな研究も続けられるなど、外国人の僕としてはとても助かりました。また英語で発表できるのも良かったです。現在の僕の日本語レベルで、人に伝わる発表をするのは難しいです。英語の方が研究内容や言いたいことがダイレクトに伝わりますから。
古澤さん:
学生でありながらお給料をいただくことができて、研究に専念できたのでとても助かりました。
ダニエラさん:
トップ研究者の素晴らしいレクチャーを聞けたときには、モチベーションが高まりましたし、夢もふくらみました。
山田さん:
COEX MEETINGが良かったです。学会よりも鋭い質問が来るんですよね(笑)。また英語で話すことで自分の自信につながりました。COEX MEETINGは準備する際のモチベーションも高くキープできます。発表を聞いてくれる人たちがみんな顔なじみということもあり、失敗したくはないですし、本当にいい発表をしたいんですよね。サポートがあるので経済面ではとても助かりました。ゆとりを持ちながら研究できるのは嬉しいです。
吉田さん:
教室の壁を超えて、志を一緒にする同世代が集い、自由にディスカッションしたり、場を広げていけたと思います。GCOEがなければ研究室のメンバーだけで4年間が終わっていたはずです。こんなに仲間を増やせたことは、今後僕が研究をしていく上で大きな財産になりました。
馬渕先生:
一方で、GCOEのRAになって大変だったことは何ですか?
津山さん:
GCOEの活動に時間を使うと、実験の時間があまりない......というときもありました。いろいろな予定がある中で、実験をこなさなくてはならないため、時間管理能力が鍛えられたと思います。
リンさん:
GCOEの活動としてポスターを作ったり、プレゼンの準備をするのは大変な面もありますが、外部の学会に対応できる力がつくと感じました。でも発表の機会が巡ってくると「また僕かぁ」なんて思うことも(笑)。学内での発表は、みんなの顔を知っているからこそ緊張する場でした。いいプレッシャーになっていると思います。専門分野がそれぞれ違うので、どう作れば伝わるかと考えながら、分かりやすい資料を作るよう心がけていました。
古澤さん:
セミナーがとても多いので、実験の合間をぬって、タイマーを持って参加したりとか、めまぐるしく動くことが最初のうちは大変でした。成果報告書、申請書を書くときも慣れないうちは苦労しました。この先申請書を書く機会もあるので、とてもいい練習になったのではと感じています。また自分の研究を発表する機会には、みんながあまり知らない免疫について、どう話せば伝わるか考えながら取り組めたので、とても勉強になりました。
ダニエラさん:
セミナーや実験はスケジュールに埋め込めましたが、1つ大変だったのはD1のショートプレゼンテーション(COEX MEETING)でした。ブラジルでの大学時代は、人前で発表する機会はあまりなかったんです。特に母国語以外の言語で話すことはありませんでした。私にとって英語で話をするのは、とてもチャレンジングなことでした。いずれ学会で発表する日もやってくるので、学内で数多く練習できたことはとても良かったです。英語での専門用語を覚えられましたし、英語の発表にも慣れてきたと思います。
吉田さん:
セミナーとCOEX MEETINGがとても良い活動でした。異分野の融合ですよね。僕はレポートを書くのが大変でした。書きすぎて「容量超えてます」と言われたことも(笑)。調べることが多く、実験との両立に苦労したと思います。
馬渕先生:
特に印象的だったGCOEの活動は何でしたか?
吉田さん:
COEX MEETINGですね。自分がレビュワーになったつもりで、相手の研究を理解しようと考える力がついたと思います。1ヶ月に1度の楽しみでした。発表前に松尾先生に丁寧にご指導いただけることも、とてもありがたかったです。準備万端で臨めました。時間がかかる分、力がつきました。
山田さん:
僕もCOEX MEETINGです。学会での発表時間は6~7分くらいですが、COEX MEETINGでは30分くらい時間があったんですよね。その中で英語を話すのでとても鍛えられました。そのおかげで学会では気持ちにゆとりを持てるようになりました。
古澤さん:
Augustine先生がオーガナイズしている、英語でのプレゼンスキル向上のためのワークショップです。何気ない気持ちで参加したのですがとても良かったです。参加者全員がコメントをくれるというのも嬉しいです。こういった機会が多かったので、4年間かけて少しずつ英語に慣れることができたのだと思います。
リンさん:
さまざまな学会に行かせていただいたことです。熊本での学会のときに、偉大な先生方と近くでお話できたことが記憶に残っています。
原田さん:
スチューデントセミナーが印象に残っています。普通は会えないような、第一線で活躍されている先生のお話を聞けますし、希望すればディスカッションもできます。なかなか学生には与えられない機会だと感じますね。
馬渕先生:
COEX MEETINGと、それを取り仕切ってくれた松尾先生について話していきましょうか。
山田さん:
研究熱心で面倒見がいい先生ですよね。COEX MEETINGでの発表のリハーサルでは細やかにフォローして下さいました。
ダニエラさん:
COEX MEETINGでは自分の分野でなくても、良いアイデアをいただけました。松尾先生にはCOEX MEETINGの前のリハーサルで丁寧に見ていただき、たくさんのアドバイスをいただきました。
リンさん:
松尾先生からは発表前に、プレゼンに関して親身になったアドバイスをいただきました。COEX MEETINGでは異分野であっても、相手の発表内容を理解しないと質問ができないので、真剣に聞いて理解するという環境ができていたと思います。
原田さん:
臨床からドクターコースに入ると、プレゼン機会があまりなかったため、発表の作法が分からない方も多いのではと思います。それでも、松尾先生がそういった作法をきちんと教えて下さることで、学会での発表が断然しやすくなります。学生のときにきちんとした指導を受けられてありがたいです。またCOEX MEETINGでは、本当に鋭い質問が飛んでくるので勉強になります。研究室内での緊張とは別の緊張がありますよね(笑)。
馬渕先生:
GCOEのRA制度について感じることは何ですか?
吉田さん:
RAとして国からいただいたお金で研究し、世の中に還元するという活動に対して、誇りを持つことができたと思います。RAは心の拠り所でもあります。サイトの若手研究者情報の欄に名前が載っている とやはり嬉しいです。これを見ると初心に返ることができますから。
山田さん:
自分の研究活動に誇りを持てます。広い視野を持ちながら研究できたと思っています。
ダニエラさん:
科学の知識を分け合うことで、ひとりひとりが成長できるという、研究には欠かせない大事な役割を果たせた活動でした。
古澤さん:
アメリカの学会に行かせていただいたことがあります。その他、RAにならないとできない貴重な体験をたくさんさせていただきました。
リンさん:
RA制度がなければここにいなかったと思います。手厚いサポートがあったからこそ、外国人というハードルを超えて、今僕はここで研究に取り組めています。
原田さん:
サポートがなければ慶應に入学していなかったと思います。また自分が研究している内容が本当に正しいのかなど、ときに自信を持てなくなることもあります。それでも申請書や発表で公平に評価していただける環境なので、自分がしてきたことは間違いではなかったという自信につながりました。
津山さん:
RAになったことでいただけるサポート面は非常に大きいです。それがなければバイトをしないと生きていけません。恵まれた環境のおかげで、研究だけに専念できました。RA同士でつながりを持つことができ、会話の中で思わぬアイデアをもらえたこともたくさんありました。
馬渕先生:
それでは、グローバルCOEというプログラムに出会い、GCOE RAとして研究生活を送れた幸運に感謝して、本日の座談会を終了したいと思います。皆さんありがとうございました。
GCOEを漢字1文字で表すなら
津山さん:
「錬」ですね。本当に鍛えられました。特に英語は学会でオーストラリアを訪れたとき、急遽4時間くらい喋ることになって開き直れましたし、実力もついたと思います。
原田さん:
情熱の「熱」です。常に全員が真剣勝負していた場所で、とてもアツい時間を過ごせました。
リンさん:
機会の「機」です。チャンスがたくさんあったと思います。
古澤さん:
「援」です。4年間研究面でも生活面でも支えていただき、研究に専念できて成長できました。GCOEのRAがあったからこそ、今までやってこられました。
ダニエラさん:
未来の「future」です。研究は時間がかかるものですが、将来の社会で役に立つことを見つけたいという気持ちが芽生えました。
山田さん:
「礎」ですね。4年間で築いてきた知識や発見を、今後につなげていきたいです。
吉田さん:
「夢」です。慶應大学医学部創設者の北里柴三郎先生は、当時から「基礎と臨床の融合」を掲げていらっしゃいましたが、進歩すればするほど、その2つが乖離してしまう傾向があります。でもそこにギャップが生じるのは仕方ないことだとも思います。基礎と臨床を担当する先生がバランス良く入って、ひとつに融合しているGCOEの活動は、とても素晴らしいと感じています。
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