慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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幹細胞医学教育研究センター

幹細胞医学教育研究センターをGCOEバージョンへと発展

GCOE フローサイトメトリー教育・研究センター(FCM)

責任者:松崎有未 総合医科学研究センター 特任准教授

写真 私達は2004年より慶應義塾大学21世紀COEプログラムの支援により、総合医科学研究センター内にフローサイトメトリー(FCM)コアファシリティーを設立しました。2008年からはGCOE施設として運営を引き継ぎ、学内外の研究者との共同研究および研究支援を行ってきました。
FCMは非常に高価かつ操作が難しい機器であるにも関わらず、専門の技官や管理体制そして共同利用体制等の整備が十分になされていないケースが非常に多く見受けられます。慣れない研究者が自ら操作する場合、機器操作に気をとられるあまり最も重要なはずの細胞の扱いがおろそかになる、機器故障の始末に追われる、経験不足によるトラブルシューティングに手間取る、といった状況に陥りがちです。医学部に所属する研究者の多くは臨床と基礎研究を両立しなければならず、このような状態が続くことは世界に通用するレベルの研究を行う上で大きな障害となります。
我々が運営するFCMコアファシリティーは欧米型の中央管理方式を取り入れ、メンテナンス・必要な試薬類の常備・機器操作など、FCMを利用するにあたって必要な全ての管理運営を常駐スタッフが行い、利用者はあらかじめメンバー登録した上で、インターネットで予約を入れ、当日はサンプルを準備して持参すれば良いだけ、という方式を採用しました。この5年間利用者数は増加の一途をたどり、年間通算利用5000時間という高い利用率を達成しました。
また、研究支援には誰もが便利に利用できる"施設"としての機能ばかりではなく、コンサルテーションの役割も重要であると考えております。どのような実験でも初めて行う時には手技に不安があり、どんな結果が出てもなかなかそれを信じることができないものです。この不安と自信のなさが新たなテーマに立ち向かう障害となります。したがってこの不安を解消すれば、高いと思われたしきいは格段に低くなります。FCMのスペシャリストとして我々がこれまで培った知識と経験を活用すれば、研究初心者や時間的制約にしばられた臨床医が研究を行う上で、より活動しやすい環境づくりができます。
私達のファシリティーでは単に細胞分離を行うだけでなく、実験手技に関する助言を適宜行い、また研究目的遂行のための適切な実験プラン、研究テーマ、研究の方向性等、について十分ディスカッションを行い、一流紙への掲載を目指すレベルとなるよう若い研究者達をはげまし続けた結果、慶應義塾大学内外の研究室との共同研究の成果として、2004年以降、多数の共著論文を発表しました。

【担当研究員】
鈴木禎史 慶應義塾大学総合医科学研究センター研究員

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[図1] フローサイトメトリーは細胞一つ一つの情報を元に目的とする細胞を分離できる装置ですべてほぼ完成し、特許化、論文化を行っている。

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[図2] 当施設に設置されている超高速セルソーターの外観

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[図3] 当施設はオペレーターが常駐しており、ユーザーはサンプルを持ち込むだけで利用可能です

GCOE慶應義塾大学ベクタープロセシングセンター(KVPC)

責任者:河上 裕 先端医科学研究所 細胞情報研究部門 教授

写真 慶應義塾大学医学部ベクタープロセシングセンター: KVPC (Keio University Vector Processing Center)は種々の幹細胞由来の細胞治療製剤を治験薬GMP(iGMP: GMP for investigational new drug)規格で製剤化し、探索的臨床研究(Translational Research:TR)を実現するために運営・管理されてきました。高度な製造管理と品質管理を実現するためには、各種法令・指針および治験薬GMPに準拠した品質マニュアル等が不可欠であるために、それらのGMP関連文書を時間をかけて整備してきました。また、施設の定期的清掃やバリデーションを行い、当該施設が適切な環境下で維持・管理されているかを絶えずモニタリングして参りました。具体的な当該施設を使用した臨床研究の例として、「ヒト角膜輪部上皮から分離培養した重層化角膜上皮シート」のスティーブンスジョンソン症候群への治療があげられます(2010年2月プレスリリース)。同臨床研究ではドナー角膜由来幹細胞をドナー骨髄間葉系幹細胞と共培養して移植可能な上皮シートを作成する技術が用いられました。この臨床研究は学内IRB(institutional review board)と厚生労働省の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の基準に準拠したものであり、幹細胞の臨床応用における先駆的な事例の一つと自負しております。また、現在もその製造法を改良しつつ、臨床研究を継続しております。東日本大震災においては、当該施設は同じ棟内の多くの施設が被害を被るなか、大きなダメージを受けることなく継続運用できました。本年、種々の幹細胞由来の細胞加工医薬品に関する指針が新たに公布されましたが、今後iPS細胞由来の種々の幹細胞再生医療プロジェクトや免疫細胞製造が当該施設を利用して予定されています。そこで、それらの指針に対応するために、ひき続き運営管理文書を改訂するとともに、人的および施設の体制等をより整備・充実させていく予定です。本GCOEプロジェクトにおいて、ヒト幹細胞由来細胞治療製剤を実際に製造して治療に応用できたことは大きな成果であり、今後のiPS細胞を含む種々の幹細胞製剤の臨床研究に向けての基盤構築につながったものと考えます。

【担当教員・研究員】
大多茂樹 慶應義塾大学総合医科学研究センター特任講師
川嶋志帆子 慶應義塾大学総合医科学研究センター研究員

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[図1] KVPC施設俯瞰図

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[図2] KVPCP内P2ルーム

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[図3] KVPC内グレードBゾーン

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[図4] KVPC内での作業風景

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[図5] 角膜幹細胞由来角膜上皮シート生産品

GCOE小型魚類教育研究センター(KSFC)

責任者:牧野伸司 総合医科学研究センター 特任准教授

写真 近年、ゼブラフィッシュやメダカといった小型魚類を用いた研究が飛躍的に進歩し、医学研究や創薬研究に必須なものになりつつある。これは小型魚類のライフサイクルが短く、多産であること、胚が透明で内部器官が可視化できること、初期発生が極めて短時間で進み、かつ母体外で観察できるため解析が容易であること、遺伝子導入が容易であること、などの利点を有しているからである。モルフォリーノを用いると発生初期の遺伝子が短期間で遺伝子ノックダウンでき、ENUを用いると遺伝子変異を持つ各種疾患モデル動物をスクリーニングすることもできる。ゼブラフィッシュ、メダカ共にゲノムプロジェクトの成果よりゲノム情報を入手することも可能である。
慶應義塾大学医学部では、第2校舎一階に1000個以上の水槽を備えたGCOE小型魚類教育研究センターを設置した。ゼブラフィッシュ、メダカを中心に臓器特異的に蛍光を発するトランスジェニック魚、遺伝子改変魚や疾患モデル魚を飼育し、時代に即応した研究を行える体制を整えた。本センターは医学部内の研究者すべてに門戸を開放し、本施設を利用した成果は、慶應大学医学部の生理学、小児科学、循環器内科学、発生・分化生物学、病理学、遺伝子制御学、分子生物学の各教室から論文として報告された。他大学、製薬企業との共同研究の場として利用される以外にも、20名を超える医学部生、薬学部生の研究実習(自主学習)に使用されて、実験研究の教育施設としても機能してきた。今後、本センターを利用した成果がますます世界に発信されることが期待される。

【担当研究員】
斧美咲 慶應義塾大学総合医科学研究センター研究員

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GCOEイメージングセンター

責任者:大西保行 公益財団法人 実験動物中央研究所部長

写真  イメージング技術は、In Vivo実験医学の重要な課題であり、本GCOEにおいても重要な役割を果たす。GCOEイメージングセンターは、プロジェクトに関連する動物実験の画像解析を担当した。当センターには、公益財団法人実験動物中央研究所(野村達次所長)との共同研究により2004年より稼働を開始した7テスラMRI装置が設置されています。MRI装置・撮像方法の最適化、アニマルベッドの開発、撮像中における生理状態のコントロールによって再現性の高い評価系を構築した。また、高度な神経疾患モデルにも対応すべく、形態解析、機能解析、定量解析法等、様々な脳画像研究手法を開発した。以下に、開発した先進的なニューロイメージング研究とそれら成果を用いた支援研究について紹介する。

 

脊髄損傷モデルマーモセットの経時的拡散テンソルトラクトグラフィ

脊髄損傷においては、軸索の断裂が運動障害、知覚障害の原因となり、その診断、評価、治療においては、軸索の状態の評価がきわめて重要である。これまでに拡散テンソルトラクトグラフィ(diffusion tensor toractography; DTT)を用いマーモセットの脊髄損傷モデルにおける神経走行構造を描出することに成功している(Fujiyoshi et al., J Neurosci 2007)。本研究ではヒトの脊髄損傷の病態をよく反映した脊髄圧挫損傷モデル(Iwanami et al., J Neurosci Res 2005)を対象に、継時的に神経走行路の評価を行った。その結果、DTTは、運動機能や神経軸索密度と高い相関を示しており、DTTが脊髄損傷の臨床評価に応用可能であることを示した(Konomi et al., Neuroimage 2012)。

拡散テンソルトラクトグラフィを用いたラット末梢神経における圧挫損傷とその再生過程の描出

これまで損傷末梢神経の画像評価として様々な試みがなされているが、神経軸索の可視化には困難な問題が山積している。従来の侵襲的なトレーサーに代わる神経軸索の評価法としてDTTに着目し、標本および生体におけるラット末梢神経損傷の再生過程を描出し、組織像を反映することを報告した。本研究の結果からDTTを用いた神経軸索の再生過程の評価が可能であり、今後の神経再生医療における種々の治療法の効果判定においてDTTの有用性が示唆された (Takagi et al., Neuroimage 2009)。

【担当教員、研究員、研究協力者】
[放射線科学] 百島祐貴、[生理学]疋島啓吾、小牧裕司、[整形外科学]中村雅也、藤吉兼浩、高木岳彦、許斐恒彦、[実験動物中央研究所]山田知歩子、[藤田保健衛生大]山田雅之

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[図1] 7テスラMRI装置(上)、実験小動物の頭部MRI(下)

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[図2] コモンマーモセット脊髄損傷モデルの継時的MRI

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[図3] 抹消神経圧挫損傷とその回復過程の神経構造の変化

GCOE動物データーベース SCAD (Shinanomachi Campus Animal Database)

責任者:松尾光一

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 マウスデーターベース「SCAD」は、信濃町キャンパス内の遺伝子改変動物(ノックアウトマウス、ノックインマウス、トランスジェニックマウス、自然変異マウスなど)の有効利用・共同研究促進を目的に、21世紀COEプログラムの一環として2005年に構築を始めました。SCADは、国内外からの実験動物導入の敷居が高くなりつつある状況で、必要な動物取り寄せが遅れたり、逆に重複して取り寄せたりすることのないよう、施設内で飼育されている実験動物の情報を一元的に管理し、相互利用を進めることを目的に作成したデータベースです。
 GCOEプログラム期間中は学内からパスワードを用いて登録者が利用する方式を採用し、期間内に186のマウスが登録され、2013年3月31日現在、60名の方に利用頂いています。
 またGCOEプログラム終了に伴い、今後は動物実験センターの管轄にして、以下のアドレスにて公開することを目指し改良中です。
http://scad.animal.med.keio.ac.jp
今後も遺伝子組換え実験安全委員会や動物実験委員会と連携しながら、遺伝子組換え実験計画書・動物実験計画書の審査とも連携を図り、研究推進に役立つ本格的なデータベースに育てていきます。

GCOE大学院教育リエゾンセンター(GCOE-LICE)

責任者:佐谷秀行

写真 写真 GCOEの大学院生が幹細胞に関する広い知識と実験技術の習得に必要な科目を、大学院のカリキュラムの中から選択・アレンジし、効率良く且つもれなく履修できるように教育指導を行うことが、本センターのミッションです。講義は極めて基礎的な発生生物学から、最新の再生医学や癌幹細胞まで広く幹細胞に関する知識をカバーし、国内外の著名研究者によるセミナーもカリキュラムの一部として含みます。GCOE-LICEから大学院生に対してセミナーや講義の予定を発信し、重要な情報を常に大学院生が取得することができるように、適切なガイドを行っていきます。

GCOE-LICE設定による幹細胞レクチャーコース(1年次必修)

写真 1年次グローバルCOE RAは大学院の副科目として「幹細胞医学(担当教官 岡野栄之・佐谷秀行)」を履修して頂きます。この「幹細胞医学」という科目では、以下に述べる幹細胞に関する基礎的および最新の情報に関するレクチャーを聴講することで単位が与えられます。

  1. 医学部学生(2年生)を対象に開講される「分子細胞生物学Ⅱ(MCBⅡ)」の講義は、発生・再生に関与する多くの分野をカバーしています。15枠の講義を幹細胞レクチャーコースの講義として指定し、そのうち5枠を必ず聴講して頂くこととします。
  2. GCOE指定セミナー・特別講義・特別実習への出席
    GCOE STEMCELL SEMINAR
    GCOE指定大学院特別講義(著名講師による発生・再生研究者による講義)
    GCOE特別実習(パッチクランプ法実習・セルソーター法実習)
    などの開催をあらかじめ通知。1年次RAはこれらの指定セミナー・特別講義・特別実習に単位取得の最低条件として計5回以上出席して頂きます。

以上1.と2.の両方の条件を満たすことで幹細胞医学の単位を授与いたします。

尚、本幹細胞レクチャーコースはGCOE終了の2012年度をもって終了いたしました。 2013年度以降の「幹細胞医学」履修についての詳細は、学生課と佐谷秀行教授(担当教官/先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門)にご連絡、ご相談ください。

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