慶應義塾大学 グローバルCOEプログラム 幹細胞医学のための教育研究拠点
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塩見春彦

塩見春彦 (しおみ はるひこ)

塩見春彦 (しおみ はるひこ)

慶應義塾大学大学院医学研究科 分子生物学 教授
Haruhiko Siomi, PhD
awa403@sc.itc.keio.ac.jp
http://web.sc.itc.keio.ac.jp/dmb/sindex.html

GCOE研究テーマ(役割分担)と研究計画

組織幹細胞制御とin vivo実験医学「幹細胞維持におけるRNA制御」

幹細胞の自己新生と分化に小分子RNAが関与する遺伝子発現抑制機構、つまり、RNAサイレンシング機構が極めて重要な役割を担っていることが明らかとなってきた。幹細胞を生み出す自己複製機構を明らかにするための最も良く研究されているモデル系の一つがショウジョウバエの生殖幹細胞である。RNAサイレンシングの中核因子であるArgonauteタンパク質は遺伝子ファミリーを形成しているが、生殖細胞にはそのサブファミリーであるPIWIタンパク質が発現している。ショウジョウバエ生殖幹細胞の自己新生と分裂には幹細胞nicheを形成する体細胞におけるPiwiの発現が必須である。PiwiはnicheにおいてpiRNAと呼ばれる24030塩基長の小分子RNAと結合している。我々は生化学的解析を用いて、PIWI-piRNA複合体による遺伝子発現抑制機構と生殖幹細胞制御機構との接点を探り、生殖幹細胞における自己新生機構だけでなく、nicheとの細胞および分子間の相互作用を解明する。また、ショウジョウバエで得られた知見をもとに、マウスの生殖幹細胞制御機構の解明にも貢献する。

これまでの研究成果

RNA干渉(RNAi)に代表される20030塩基長の小分子RNAが関与する遺伝子抑制現象は、現在、包括的にRNAサイレンシングと呼ばれている。我々は、遺伝性の精神遅滞症としては最も発症頻度の高い疾患である脆弱X症候群の発症機構の研究からRNAサイレンシング研究へと仕事を発展させてきた。我々はRNAサイレンシングにおける中核因子であるArgonauteタンパク質に対するモノクローナル抗体を作製することで、RNAサイレンシング経路に関与する新規因子の同定やArgonauteの生化学的性状や機能の解明等の成果をあげた。これらモノクローナル抗体と次世代型シーケンサを用いることで、幹細胞を含む様々な組織または細胞におけるmiRNA等の小分子RNAの発現様式と機能、さらにはそれらの病態における変動を解析することが可能になった。

Fig.1

Fig.2

代表論文

  1. Azuma-Mukai, A., Oguri, H., Kin, T., Qian, ZR., Asai, K., Siomi, H., and Siomi, MC. 2008. Characterization of endogenous human Argonautes and their miRNA partners in RNA silencing. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 105:7964-7969.
  2. Kawamura, Y., Saito, K., Kin, T., Ono, Y., Asai, K., Sunohara, T., Okada, NT., Siomi MC. & Siomi, H. 2008. Drosophila endogenous small RNAs bind to Argonaute2 in somatic cells. Nature 453: 793-797.
  3. Gunawardane, LS., Saito, K., Nishida, KM., Miyoshi, K., Kawamura, Y., Nagami, T., Siomi, H., and Siomi, MC. 2007. A Slicer-mediated mechanism for rasiRNA 5'end formation in Drosophila. Science 315: 1587-1590.
  4. Saito, K., Nishida, KM., Mori, T., Kawamura, Y., Miyoshi, K., Nagami, T., Siomi, H., and Siomi, MC. 2006. Specific association of Piwi with rasiRNAs derived from retrotransposon and heterochromatic regions in the Drosophila genome. Genes & Development 20: 2214-2222.
  5. Miyoshi, K., Tsukumo, H., Nagami, T., Siomi, H., and Siomi, MC. 2005 Slicer function of Drosophila Argonautes and its involvement in RISC formation. Genes & Development 19: 2837-2848.

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