CELL METABOLISM.
24 (2):295-310; 10.1016/j.cmet.2016.07.009 AUG 9 2016
Kawano Yoshinaga, Nakae Jun, Watanabe Nobuyuki, Kikuchi Tetsuhiro, Tateya Sanshiro, Tamori Yoshikazu, Kaneko Mari, Abe Takaya, Onodera Masafumi, Itoh Hiroshi
これまでの先行研究において、肥満によるインスリン抵抗性発症の上流には脂肪組織の慢性炎症があり、その引き金として高脂肪食負荷による腸内細菌叢の変化Dysbiosisが重要であるといわれてきました。本研究では、宿主側においてその腸内細菌叢や食事内容の変化を最初に感知する臓器である腸管、特に腸管免疫に着目しました。 4週間高脂肪食で飼育したマウスの大腸では、腸管上皮においてマクロファージの集積を誘導する蛋白質Ccl2(Chemokine C-C motif ligand 2)の産生が増加し、炎症性マクロファージが集積します。本研究チームは、Ccl2を腸管上皮だけで欠損させた腸管上皮特異的タモキシフェン誘導型Ccl2欠損マウスを作製し、高脂肪負荷下で耐糖能を解析しました。このマウスでは、高脂肪食に伴う大腸へのマクロファージの集積が減少し腸管の炎症が抑えられ、門脈の炎症性サイトカインや細菌内毒素(LPS)の濃度が低下し、結果脂肪組織の炎症が抑制され、高脂肪食による血糖値の上昇が30%程度抑えられました。以上より、高脂肪食負荷の大腸マクロファージによる炎症が糖尿病発症につながりうることが示唆されました。今後は、ヒトの肥満における大腸腸管上皮のケモカインの変化、またその活性を抑制する化合物を同定し、新規の糖尿病治療薬の開発につなげたいと考えています。
(腎臓内分泌代謝内科 川野義長 86回)
化学療法などのストレスで白血球などの分化血球が減少した際には、造血幹細胞が失われた分化血球を供給します。こうした現象を「ストレス造血」と呼びますが、その機序には不明な点が多く残されています。私たちはストレス造血の制御機構として細胞のストレスセンサーp38αに着目しました。p38αを欠損した造血幹細胞は各種のストレスに対し脆弱で、ストレス後の増殖が抑制されていました。網羅的な代謝物解析から、造血幹細胞のp38αの下流分子としてプリン体合成の律速酵素であるImpdh2を見出し、その発現低下によるプリン体代謝異常をp38α欠損造血幹細胞におけるストレス造血異常の原因として同定しました。さらに、皮膚の色素幹細胞の維持に不可欠とされる転写因子Mitfがこれらを仲介することを見出しました。今回の報告は、造血幹細胞の増殖にp38α-Mitf-Impdh2シグナルを通じた造血幹細胞の細胞内代謝のダイナミックな変化が必要であることを示しており、幹細胞の増幅技術の開発に示唆を与えると考えられます。また、白血病幹細胞は正常の造血幹細胞と性質が近いため、白血病の病態解明や治療に役立つことも期待されます。
(血液内科 雁金大樹 00回、国立国際医療研究センター研究所 田久保圭誉 82回)
MOLECULAR CELL.
63 (3):408-419; 10.1016/j.molcel.2016.06.008 AUG 4 2016
Iwasaki Yuka W., Murano Kensaku, Ishizu Hirotsugu, Shibuya Aoi, Iyoda Yumiko, Siomi Mikiko C., Siomi Haruhiko, Saito Kuniaki
JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY.
34 (24):2881-+; 10.1200/ AUG 20 2016
Sugiyama Toru, Okamoto Aikou, Enomoto Takayuki, Hamano Tetsutaro, Aotani Eriko, Terao Yasuhisa, Suzuki Nao, Mikami Mikio, Yaegashi Nobuo, Kato Kiyoko, Yoshikawa Hiroyuki, Yokoyama Yoshihito, Tanabe Hiroshi, Nishino Koji, Nomura Hiroyuki, Kim Jae-Weon, Kim Byoung-Gie, Pignata Sandro, Alexandre Jerome, Green John, Isonishi Seiji, Terauchi Fumitoshi, Fujiwara Keiichi, Aoki Daisuke